第51話 『世界の車窓から殺し屋日記2 ブラジル編』 久里 琳さん

〇作品 『世界の車窓から殺し屋日記2 ブラジル編』

 https://kakuyomu.jp/works/16816452219265506450

 

〇作者 久里 琳さん


【作品の状態】

 中編。完結済!


【セルフレイティング】

 残酷描写有り。


【作品を見つけた経緯】

 以前、久里 琳さんさんの『世界の車窓から殺し屋日記』を拝読したことがあり、『問わず語り~』で紹介していたところ、それをご覧になった読者の方から「続きがありますよ」と、教えていただいたのがきっかけです。


 前作:『世界の車窓から殺し屋日記』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054918319469


【ざっくりと内容説明】

 主人公は、とある特殊能力を持った殺し屋です。今回の舞台はブラジル。どういうミッションを遂行するのか……に注目したいところですが、やはりこのシリーズの見どころは、仕事に行くまでの道中とその帰りにある旅のお話でしょう。

 さて、日本から遠く離れた地で、主人公はどんな風景を見るのでしょうか。


【表記の特徴】

 多くの漢字に旧字体を用いていたり、普段は使わない漢字の表記をしているものがあります(それがこの作品の雰囲気を作っているなと思います)。しかし、「読むのが難しそうかな」と思うのは早計です。作者さんが「読むのが難しそうだな」と思う部分には、ほぼ確実にルビが振って下さってますので、ご安心あれ。

 また基本的な文章は分かり易いので、「漢字が難しそう」という理由で敬遠されなくても大丈夫です。


【感想】

 タイトルにある通り「殺し屋日記」なので、主人公はその仕事も行います。しかしお話の全体からすると、主人公が仕事をしている話はそれほど多くはありません。仕事をするまでの異国の過ごし方が話の中心になっていて、旅行気分を味わるのが特徴なのです。よって「殺し屋」の部分が苦手な人も、旅日記の方は楽しめるのではないかと思います。


 さて、今回はブラジルが舞台でしたが、最初から最後まで「美味しいもの尽くし!」という感じでした。

 出てくる料理がとにかく沢山。第1話目で、すでに3つ(数え間違いでなければ)出てきましたし、やはり南米ということもあってか、肉、肉、肉! という印象が残っています。

 主人公は出てくる食事の美味しさについつい惹かれて、いつも満腹になっていましたが、これまた作者さんの巧みな文章表現のお陰で、まるでこちらも食べているかのようになり、読んでいるだけでお腹いっぱいになってしまいそうでした。


 この物語では、主人公が旅をしている様子を読者の私たちが見ているように描かれていますが、時折、その土地の文化や歴史なども語ってくれるのが、とても興味深いです。今回の旅でも、面白いなと思った内容は沢山あったのですが、あえて一つ取り上げるなら、「ブラジル人の食べ物に対する考え方」でしょうか。


 第25話に、


 >どうもブラジル人は食べ物を粗末に扱うことに罪悪感が希薄と見えて、大量に料理を皿に盛っておいて平気で食べ残すし、残した物は未練なく棄てるようだ。農産物に恵まれたブラジルの人々が、有史以前から度々飢饉に見舞われた記憶が社会の遺伝子に刻み込まれた日本人と感覚を同じくすることはないのかも知れない。(『世界の車窓から殺し屋日記2 ブラジル編』より引用)


と、いう文章があって、私は意外だなと思いました。

 それは私が、ブラジルという国が貧困の多い国だと勝手に思っていたからです。新型コロナの感染が世界中に広まった際、ブラジルで対策をするか否かの問題が起こっていたことがニュースになっていたことがありました。そこで貧困層の人たちが所狭しと生活している場所を目にしたために、その印象が強く残っていたのだろうと思います。


 勿論、そういう貧困層の人たちがいることは確かでしょうが、レストランで次々と出てくる料理の数を見る限り、ブラジルという国自体は飢えているということはなく、多くの食べ物があって食文化も豊かであることを感じました。


 紹介文では、最初から最後まで『世界の車窓から殺し屋日記2 ブラジル編』に出てくる食べ物の話をしてしまいましたが(すみません……)、日本とは違う日差しを感じられるような、面白いブラジル日記です。気になる方は、読んでみてはいかがでしょうか。


 今日は『世界の車窓から殺し屋日記2 ブラジル編』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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