第37話 有給休暇編③
「え、休みなの!?」
片手にブラックコーヒーを持ったカグラが驚き、動きが停止する。答えたのはトームだ。
「はい、休みです」
「なんでまた、休みって。一に仕事、二に仕事、三四が私で、五に仕事ってくらいマジメ人間のマトラが」
「なんで三、四がカグラさんなんですか」
「私がマトラのことを愛してるからよ」
カグラは恥ずかしげもなくそう言って、トゥルトゥルの真紅のツインテールをなびかせる。
ツッコミの返しにトームは「とうとう隠しもしなくなったなこの人」と呆れ果てていると、カグラが訊いてくる。
「で、マジな話。なんで休んでるわけ?」
「有給休暇の消化です」
「あー、なるへそ」
カグラは「マトラっぽいわぁ」と続ける。
「何日溜まってるわけ?」
「2.5日分です」
「あと1.5日分か。絶対やることに困ってるわ」
それにはトームも同感だ。
するとカグラの頭上で豆電球が光る。なにを閃いたのかマトラの席に座る。
「トームちゃん、今夜ヒマ?」
「特になにも無いですけど」
「飲みに行かない?マトラも誘ってさ」
「いいですね。ご一緒させて下さい」
「楽しそうじゃないか、お二人さん?」
ハッと気づくと目の前にはザックさんが仁王立ちしている!このオーラ、あまり面識のないトームでも理解できた。
お、怒ってる…。
「一応、勤務時間なのだが?昼休みまでは一時間以上あるよな?」
「あ、あのぅ……ザックさん何故ここに」
声が小さくなるカグラにザックは笑顔で答える。
「マジメ人間のマトラはちゃんと休んだ時の段取りくらいは組んでるんだよ。後輩のトームの様子も気にかけて下さいと言伝にあった」
マジメ人間のマトラ……どうやら最初から聞いてたらしい。ザックは短く言う。
「仕事しろ。持ち場に戻れ」
「イエッサー!」
いい返事とともにカグラはブラックコーヒーをザックに差し上げてツッタカターと急いで退散。
カグラから連絡用アプリ“LINNE”のグループ招待の通知が来たのはそこから1時間以上あとのことだった。
───*────*────*───
ヘックシュン!とくしゃみをするマトラ。十キロほどランニングをして帰ってきたところだ。カグラが私の噂でもしてるのだろうか。いや、気のせいかな。急に体が冷えたからかもしれない。
マトラは汗を流しにバスルームへと向かった。
異世界管理局員マトラ 堀北 薫 @2229
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