第36話 有給休暇編②
目覚ましが元気よくピピピと鳴る。
布団から手を伸ばしアラームを止めると数秒、寝ぼけ眼で上半身を起こす。
うーむ、起きてしまった。
二度寝しようと思ったが、身体が既にオンの状態になってしまった。目が冴えて寝れなそうな感じがする。習慣とは侮れないものだ。
マトラは寝癖で跳ねた髪を撫でて直すも、ピョンと力強く飛び出してくる。
「……起きるか」
──有給休暇1日目──
朝はコーヒーを飲むのがルーティンだ。もちろんコーヒー豆から引いたものもいいが、朝の急いでいる時間帯ではインスタントになる。今ではインスタントもかなり美味しくなっているのだからいい時代だ。
コーヒーをマグカップに淹れて、リビングに行く。時計を流し見、6時38分か。
マトラは携帯端末を親指でいじりながらコーヒーに口をつける。
先日、トームにはいきなり休みをもらってもなと消極的な意見を言ったものだが……。
マトラはリビングから収納室へと顔を向ける。そこには積まれた本、本、本。漫画や雑誌もあるが量的に多いのは文藝書だ。ミステリーや推理ものが好きで、読みたいと思ったら手に取る。
“本との出会いは一期一会”
現世で生きていた際に聞いた言葉である。幸い異世界管理局の給料は悪くない。だから手に取ったらそのままお会計でもお財布は痛くも痒くもない。とはいえ。
「買いすぎたかな」
どう見ても1日、2日で読み終わる量ではない。
「長編か……」と呟きつつめくり、そっと閉じる。結局、読みやすそうな短編集、連作集を2、3冊選んだ。
パンをトーストにしてお腹に入れる。朝ご飯はこれでよし。
洗面所で顔を洗い、寝癖を直すと歯を磨く。
パジャマからトレーニングウェアに着替えてジャージを羽織る。明るめに水色でいいか。
スポーツサングラスとイヤホンを持ち外に出る。仕事が休みだからダラダラするのもいいけど、適度に体を動かさなければ。特に私の異世界の性質上、鍛錬は必須だ。
マトラは元気に走り出した。
──────つづく
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