エロ漫画家わからせ教育委員会

@HasumiChouji

エロ漫画家わからせ教育委員会

「では、この4年で、貴方がSNSと画像投稿サイトで公開したエロ絵と、商業誌に載せたマンガ、商用Webサイトに載せたマンガやイラスト、更にエロ同人誌に関して……科学的に有り得ない点が57個、人権上問題が有る点が83個、その他、性教育上問題が有る点が124個。1ヶ月以内に釈明書または反省文を提出の上、2ヶ月以内に研修を受けて下さい。そうしないと『エロ・コンテンツ製作者免許』の更新は認められません」

 エロ漫画家を続ける為に必要な「エロ・コンテンツ製作者免許」の更新に、県の教育委員会の「性教育部」に行った俺は、いきなり、そう言われた。

「あの……釈明書や反省文が突き返される場合は有るんでしょうか……?」

「ネット上に転がってるテンプレを使ったら、すぐにバレますよ。1ヶ月以内に提出とは『1ヶ月以内に釈明書または反省文を提出し、それが我々が受理出来る内容だった場合』の意味です。あと、提出と研修はand条件です。両方を満たさないと免許更新は出来ません」

「あの……研修って……最後にテストとか……」

「ええ、テストで合格点を取らないと研修を終えたと見做されません」

「えっと……釈明書か反省文は……」

「もちろん、1件につき1つ作って下さい。ここで言う『1ヶ月以内に提出』とは、1ヶ月以内に、貴方が計264個の釈明書または反省文を作って、ここに持って来て、その後、我々が1つ残らず受理可能な内容だ、と判断した場合のみを指します。あ、御安心下さい。1ヶ月とは『あなたが釈明書または反省文をここに持って来る』までの時間です。とは言え、再提出も有り得ますので、ギリギリに持って来るのは、お勧め出来ません」

 いつの頃からか……「エロ・コンテンツは若者の性教育に役立つ筈だ」と俺達の同業者が主張し始めた。

 そして……社会は、それを受け入れてくれて、俺達が作るエロ絵・エロ小説・エロ漫画・エロ同人誌を「性教育に役立つもの」として扱う、と云う法律が作られた。

 ただし、俺達が、望んでいたのとは逆……もしくは俺達の主張が歪められた形で。

 エロ絵・エロ小説・エロ漫画・エロ同人誌を有料であれネット上などにおいて無料であれ製作・公開する者は「教育者」としての資格が必要になったのだ。

 そして、俺達は住んでいる地方自治体の教育委員会の監視下におかれる事になった……。

「あ……ちょっと待って、まだ帰らないで」

 暗澹たる気分になって帰ろうとした俺を教育委員会のクソ野郎が呼び止めた。

「ニュースなどで聞かれてると思いますが、教員免許の更新が2年毎になる法改正が有ったのは御存知ですよね?」

 いえ、御存知ありません。そもそも、俺の免許と何の関係が有るんですか?

「それに合わせて、同じ教育者である『エロ・コンテンツ製作者』の免許更新も2年毎になりました……。事前に通知が行くと思いますが……一応、ここでも、お報せしときますね。次の更新は……これまでみたいに4年後じゃなくて、2年後です」

 たのむ……誰か……エロ本の18禁マークを復活させてくれ……。

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