私が小説を書く理由

一粒の角砂糖

比較

私は小説を書いている。

このカクヨムという場所だけではなく他の場所でも別の人間として小説を書いている。

自分はついこの前までカクヨム甲子園に出場して上位を取ると意気込んでいた。が、結果は散々であった。とてもショックだった。必死に積み上げてきた設定や世界観が及ばずにハッキリと順位が出る様は私には残酷すぎた。

そして私は他の小説サイトに逃げた。そこで自己の欲求を満たすだけに作品を書きなぐった。ジャンルの片寄ったフェチ向けの作品を書き続けた。評価は貰えた。カクヨムで上げるオリジナル作品より、見違えるほどの観覧数やいいねを貰って満足していた。だが、私の中に一つの息苦しさが湧き上がってきたのだ。

【その要素がなければ結局評価されないのでは?】

そうなのだろうか。私は浮かび上がったそれが気になってモヤモヤしたままだ。自分の書いた小説に取り柄なんかなくて、なんとなく付け足した要素だけで評判を得ているだけの素人なのだと。その要素を抜いた作品を投稿した途端に私は評価なんてされなくなって、誰も見てくれないままその作品がそのサイトの奥底に沈むだけのものになってしまうのではと。

【自分はなんのためにこの小説を書いているのか?】

そう思った。フェチ向けだろうと、オリジナルだろうとなぜ書いているのかと。それは評価を得るためでも自己の欲求を満たすためでもなかったはずだ。私が小説を書き続けてきた理由は『私の世界観を表現して共有する為』だった。

だがそれでも私は怖かった。私から何か要素を抜けばただの駄文ができるのでは。と。ただこの心情ですら、『評価を貰うため』の心配であり『私の世界観を共有する為』の心配ではなかった。

無意識に危惧していたのだ。私が誰からも評価されず、無かったことにされてしまうのが。私が書いた証拠が欲しい。私という存在がいたからこそこの作品が出来たのだと主張したい。


この悩みを乗り越えて、私はいま新たに目的、理由を見つけた。

『私はこの作品を手に取ってくれた人のために書く』のだと。興味を引くかは二の次で、興味を示してくれた人を退屈させない努力が必要なのだと。

要素が武器であってもそれを抜きにしたとしても、私は読者の心が少しでも動く小説がかけるのならそれで満足だったのかもしれない。


私と同じ作家の方々も、もしかしたら『自分自身ではなくて要素が評価を貰っているだけ』と、思っているのかもしれない。しかしそれは違うと断言したい。価値観は違うけれどあなたにはあなたの個性がある。その事実が少しでも感じられるなら胸を張って悩まずに突き進んで欲しい。きっと誰があなたの作品を待ち望んでいる。

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