残酷で、だからこそ美しい一瞬を切り取った短編

何よりも愛しいあの人が今日処刑される。
名も無き使用人である彼は、ギロチン台にかけられた彼女に必死に手を伸ばす。だが無惨にも凶刃は落ち…

秘めた恋心を伴う主従愛は、どうしてこうもキュンキュンくるのでしょう。
身分差が許されないと分かっているから?相手を思うからこそ?
「そういうのが読みたいから話を探しているんだよ!」を、叶えてくれるのが4000字にも満たないこの短編です。

冒頭は男性視点で語られ、彼女を思う気持ちが痛いほど伝わってきます。
そして後半は女性視点。処刑されるに至った真相と、彼女が抱える仄暗くも美しい心境が明かされていきます。

二人の行き着く先はどこになるのか。
これを狂愛ととるか純愛ととるか。彼女が幸せと判断するかのさじ加減が絶妙なメリバです。
約束されたハッピーエンドもいいけれど、たまにこんな話もいかがでしょう?読み手に託されたラスト、おすすめです。