第5話 5月21日 金曜日
まだ5月だというのにこんなに暑くて大丈夫なのかな。
チェックのスカートを少し折って、ワイシャツの袖を捲くる。
体調が悪くなったり、暇になると良くないことばかり考えてしまうから、
あれから約1ヶ月、部活のない日は友達と遊びに行ったり、バイトを入れたりして、まあまあ忙しく過ごしてきたと思う。おかげで考え事をする時間は少なかった。
それでも一つ気になるのは、夢の最後に聞いたあの声。
「次は精一杯生きなさい。」
どういう意味なんだろう。精一杯生きるとは。
命を無駄にはしてないと思うけど、精一杯生きなさいと言われても意味がわからなくて困ってしまう...
部活が急にオフになった今日、久しぶりに優とファミレスへ。
来月に控えた定期テスト。高校が2学期制だからテストは1年に4回。
前期は6月は9月、後期は11月と2月。私がテストを受けるのもあと4回。
テスト勉強をしようと集まったのはいいのだが...
「腹減らん??なにか食おーぜ」
席につくなりご飯ですか。
いや、いいんだよ?ただ、食欲真っ盛りの男子高生恐るべし。
少食ではない私だけど、そんな私の軽く2倍ぐらいは食べてるんじゃないかな。
食べるの早くない?いままでこんなに食べてた?
やっぱり男の子なんだな〜、なんて考え事をしてたら、
「顔になんかついてる?」
「あっ、なにもついてないよ?」
「ずっと見られてるの恥ずかしいんだけど笑
てか、手が止まってるよ??」
やばい、恥ずかしい。そんなに見てたのかな。
あの日から今まで以上に優がかっこよく見えるっていうか、
何言ってるんだろう私。
スプーンを口に運ぶ手を緩めないようにそっと顔を上げる。
そこには当たり前だけど優がいて、ついつい見惚れてしまう。
本当に幼馴染でよかった。幼馴染じゃなかったら隣にはいられなかったと思う。
人気者の優だから、学校にいるときはいつもみんなに囲まれている。
もちろんその中に可愛い女の子たちもいるわけで...
今まで以上に優のことが好きになってしまっている気がする...
ご飯を食べ終わってからは、いよいよテスト勉強なんだけど、
得意教科の違う私達はそれぞれが教え合う形でテストを乗り切る。
数学が得意な優が教えてくれる代わりに、得意な国語を教えてあげる。
計算している途中でわからなくなる私に、優は間違えている場所を指しながら何回も教えてくれる。
「__ここの式が違う。これは...」
「__ここは嬉しくなっただよ?だって...」
家で一人で勉強しているときよりも集中してできているような気がするし、
なにより、学校の先生になれると思うほど説明がわかりやすい。
そんな優も国語は苦手みたいで、特に小説系の読解問題ができない。
「なんで嬉しいってわかんの?主人公がもらったのただのキーホルダーだよ?」
「乙女心がわかってないなぁ。好きな人からもらったら嬉しいでしょ??」
「確かに??」
「優は好きな人とかいないわけ?その人にもらったら嬉しくない??」
話の流れっぽく聞いちゃった...なんて言われるかな...
これでいるって言われてもショックだけど...
「__うん。」
......え、これどっち??
いるの?いないの?嬉しいってこと?
これ以上聞けない、好きだってこと気付かれちゃったらこの関係は続かない。
あくまでも幼馴染という関係にあるから一緒にいれてるのだから。
あ〜...気まずい。聞かなければよかった。
久しぶりに2人きりで勉強できて嬉しい気持ちだったのに、風船がしぼむように気持ちも小さくなっていく。
その後は特に会話が盛り上がることもなく、残りの問題を解いて終わった。
歩いて帰っているときも、お風呂に入っているときも、さっきの返事が気になってしまって仕方がない。どういう意味だったのか。好きな人はいるのか。もしいるなら誰なのか。私じゃないかな、なんて自信は全く無いけれど、それでも小さい頃から一緒にいるのだから1%の可能性でもあったらいいのにと思う。
誰かな。かわいい子かな。私のことを少しでも思っててくれたらいいのになんて思っていたらバチが当たるかな。誰を好きになるのかなんて自由だけど、他の子だったらいやだな。
優が他の女の子と笑いながら話しているところを見ると、もやもやとした気持ちになる。嫉妬している自分に嫌気がさすけど、どうしようもない。
ダメ元で告白してみようかな。でもこの関係を壊す勇気はない。
それに、万が一この想いが通じたとしても、残された時間はもう少ない。
優のことが好き、そばに居たいと思えば思うほど、この関係を手放す勇気は持てないけど、想いは伝えておきたい。それでもつらい思いはさせたくない。
考えれば考えるほど、どうしたいのか、どうしたらいいのかがわからなくなる。
タイムリミットまで365日_ 泉 瀬奈 @hello_luna
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