独白
こんなはずではなかったがなあと、目覚めた時ヨキは思った。暗くて埃っぽくてひんやりした地下で、目は覚めているものの体を起こすことができない。自分が眠りについた後にかけられたらしき他の神々からの戒めのせいで、自分のために力を使うことは禁じられていた。
この部屋が、虫干しとかではなくて、ヨキ自身の持つ鍵で以て本当の意味で開かれるまでは、外に出ることはできないと思われた。わずかに残った神力で外界の様子を探ることはできたが、起きている時の比ではない。
夢を見ている気分だった。
そのうち、真っ赤な髪の子供が火を灯してくれることに気づいた。どうも見覚えがあると思ったら、いつだったか、雷平原を抜けてきて祝福を与えた子供だった。落雷で馬車が壊れて、雷に打たれた御者が死んでいた。雨に濡れて、地面を這いながら彼女は平原を抜けようとしていた。
何かから逃げていたのかもしれない。無事に街の入り口まで辿り着いたのを見届けて、何を思ったかわずかな神力で祝福した。彼女のもともとの白銀の髪は、たちまち俺と同じような真っ赤な髪色に変わる。
これを目印にしようと思った。もうすこしまどろんでいる間に、きっと大きくなっているだろう。そうしたら、いずれ鍵をあけてもらおう。俺の一部を分け与えたもの。祝福の子。これならよくわかる。お前が俺を目覚めさせてくれる。
その日まで待っていよう。
ヨキの火 有智子 @7_ank
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