第9話二天狼ドイツ紀行


彼には双子の姉がいた、元スラム街の貧しい家系、一人は貴族に召し上がられて、もう一人は修道院で修道女ノンネとなった。


自分は軍人になり伍長の下の上等兵となっていた、双子の姉が死亡した報が届いた。


どちらも殺人事件であった。


「誰だ………誰が!」


少し前の話、生物学者ハンス・ドリーシュは新生気論ネオヴァイタリズムを唱えて批判殺到した。


「いえいえ貴方のご高説は一理あると思います、自分は物理学者でもあり未知の物質についての可能性にもめざといモノでしてね」


日本から来た学士が彼にそんな事を言う。


「彼と関わるとろくでもないわよ」


それを見た貴族の妻となり学識のために学士となった女性が彼に語りかける。


「悪魔の証明というやつだろうな」


「それはあなたじゃないの?」


「?」



彼女は彼の後ろの怨霊の塊を見て言う。


「一部類が三十六、二部類が五十八、三部類が百二、どれも人体実験によるものだ」


「………やっぱり悪魔じゃない」


「口をつぐんでおけ」


「警察に通報するわ、殺人は殺人じゃない」


「もう一度言う、黙っていろ」


更に少し前、狼男であるとされて、一人の男が一人の女に追われていた。


「悪魔の使い!許してはおけません!」


「………敵なら殺すか」


話は彼が手紙を見たところに戻った。


「双子の兄弟のようです、ですがあちら側も貴族に相応する立場、もしくは陰謀や諜報などの闇の関係者で立件はされません」


「………は?」


悪が裁かれない、罪が裁かれない。


彼はとてつもない憤りを感じた、浅はかな口封じのために双子の姉達は殺された。


「許ざん!」


そうして復讐者が生まれたのだ。



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エルダー・ブラッド--太古の血-- 飛瀬川吉三郎 @hisekawa

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