言われてみれば一体なんだろう「輝く」って

 昔の友達から届いたあからさまに怪しいお誘いに、のこのこ出かけて行った結果あからさまに怪しい建物に着いてしまった人のお話。
 ホラーです。紹介文によれば「輝けたのでハッピーエンドです」とのことで、もうこの言い方の時点で明らかにハッピーではないのですが、でもハッピーエンドの物語。何がハッピーでどれがそうでないかは個々人の立場によって変わるという意味でもありますし、また単純に「ホラーにおけるハッピーエンドってこうだよね」みたいな捉え方もできる作品でした。なるほど。
 お話の筋としては最初の一行に書いた通りで、最終的には命が輝けます。この「輝く」の用法が面白いというか、それがタイトルと紹介文にしか出てこないところが本当に好きです。完全に物語の外、いうならメタ的な傍観者としての立ち位置からの用語。こうなるともうどう解釈したところで隠語的な意味としてしか解釈できないというか、実際こういうポジティブな語での言い換えはよくあるというか、漠としているけどでも〝絶対あかんやつ〟というのがわかるこの感じ。最後「あちゃー輝いちゃったかー」となるのがおかしいというか、この作中で起こった出来事をして「人間が輝く」という言い方をしているのが面白——いや面白いって言い方はどうなのかしらだいぶおっかないことになってますけどー、という感じでした。ブラックっていうかシニックな笑い。恐怖と両立するユーモア性のような。
 よくよく考えると理不尽極まりないっていうか、主人公の当初の懸念とあんまり外れてないのがよかったです。「怪しい宗教やサロンの勧誘」。大差ない、というか実質それのすごいバージョンというか。別に望んでないのに無理矢理〝輝き〟に引き込む感じ、というか呼びつけた時点でそれが前提になっているのがもうだいぶ酷くて好きです。
 はなから相手の合意とか考えてない感じ。だって輝けるのは幸せことだから、というか実際彼がだいぶ幸せそうなのが面白い。本当に、一般的に使われる比喩としての意味でも「輝けた」彼。ダブルミーニング、というのとはまたちょっと違うのですけれど、でもホラーとしての筋にもう一押し、「輝けた」という語の使い方そのものに旨味をのっけてきた、渋い技巧のようなものを感じる作品でした。