誕生日
片想いのあの子の誕生会。おろしたての白いスラックスを履いて、プレゼントをかごにいれて、自転車に乗る。空は黒い雲に覆われていて、台風が近づいているみたいだった。雨足が激しくなる。傘を飛ばされそうになる。
突風。横断歩道の段差でハンドルを切り損ねて、水溜まりに横転する。プレゼントの箱は潰れて、スラックスは自転車のチェーンに巻き込まれ、血と油でどろどろになる。風と雨にあおられながら自転車を押して、やっとたどり着いたパーティー会場で、誕生会は中止と知らされた。
電話、間に合わなかったんだ。ごめんね。と次の日、彼女から学校で謝られる。大丈夫、気にしないでと、笑って言えたらよかった。上手く笑えなかった。家に帰った後で、おめでとうを言い忘れたことに気付いた。
短い話 みよしじゅんいち @nosiika
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