ファースト・インプレッション

あたしがここへ来てから4度の秋になる

あたしと同じ顔をして隣に立つ彼女と一緒に

この町に来てから、もう4年

この町並みが季節とともに移り行くのを見るのももう4度目


ずっと隣で、一緒に立っている彼女も

あたしと同じ事を考えているのだろうか?

あたしと同じ微笑みを浮かべたままその内心

一体何を考えているのだろう?


悲しみや悔しさに涙するコトも出来ず

動くことすら許されないまま微笑み続けるしかない

週に1度、夜中にこの大通りに面したガラス張りの中で

全裸を晒されるのも今ではもう慣れてしまった。


彼女はいつも微笑んでいる

街往く人達に見らるコトにどう感じているのだろう?

見向きもせずに通り過ぎる人も多い中で足を止める人も

見てるのはあたし達が着ている服だけだと気付いているだろうか?


微笑み続けていても何も還ってきやしない町並み

夜になるとうっすらとガラスに反射するあたし達の笑顔

彼女もあたしと同じように虚しさを感じているのだろうか?

それともこの状況に満足しているのだろうか?


4年目ににして初めてあたしを眺める視線に気付いた

彼はあたしの着ている服ではなく、あたしを見ているような気がした

まさかね、そんなコトはあり得ない

今まで4年もの間、起こらなかったコトが今ここで起こる筈がない


彼女も同じ顔をしたあたしが一体何を考えているのか

もしかしたら探っているのかも知れない

もしもそうなら、と考えると神経が衰弱して憂鬱になる

助けて、逃げ出したい、倒れて壊れてしまえばいいの?


大通りを挟んだ向かいのガラスの向こうで

昨日と同じ場所から同じ視線を感じた。

間違いない、彼はあたしを真っ直ぐに見ている。

作り物の笑顔しか持ち合わせのないあたしを見ている。


彼はあたしを救い出してくれるのだろうか?

それとも何か災いを降りかからすために現れたもだろうか?

喩、災いをもたらせに来たにせよ、この現状から解放してくれるなら

彼はきっとあたしにとって救世主に外ならない


もしも・・・もしも彼が・・・

好意を持ってあたしを助けてくれようと思っているのだとしたなら

あたしは彼を見詰め返すべきではない

あたしは彼になんの幸福せをも還す術を持っていないのだから


けど、この孤独の中で、あたしは叫ばずにはいられない

助けて欲しい、連れ出して欲しい、全てをぶち壊して欲しい

新しい創造の中できっとあたしは、出来る限り今よりは

精一杯に尽くすことでしょう、だから、だれか・・・

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マネキン 弥生 @yayoi0319

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