ある女の話。

@tumurio

彼岸の外にて何願ふ

昔から"頑張ることが出来なかった。

頑張った事はいつも結果として悪い方向にいってしまうから。

好かれたくて,褒められたくて努力した。

嫌なことだって受け入れた。


でも褒められることも、好かれることも無かった。

いじめられた。


あれはまだ歳が二桁にいかない頃だったから世界は狭くて,それに気づいた頃には頑張

ることをやめてしまっていた。


幸い頑張らなくても人並みかそれより少し上くらいだったから問題無かった。


いじめられたとき,私を助けてくれた子と友達になった。

たまたま趣味が同じで気が合って,すぐに親友になった。


何年か後。その子にいろいろあって私が助けた。あのときは他人にとっての

「1番」になれたことがただただ嬉しくて,希望だった。

多分,それから『恋』が『愛』に変わったのだと思う。


冷たくされても、無嘩したとしても、私の思いは変わらずあの子へ向いていた。


この想いが報われることは無いってわかるようになっても「それ」は私の中で膨れていった。止めることはできないから。止めたくなかったから。


私は,私に嘘をつくことにしたのです。

「あの子を愛する私」に。


あの子と出会ってから十年程経った頃、あの子に恋人が出来ました。


中学の同級生で,いい人です。


私は当然喜びました。


「そんな野暮ったい服でいくの?悪いことは言わないからやめときな?もっと可愛い格好しなきゃ!」


戸惑いながらも幸せそうな顔をする彼女はても綺麗で,彼をいっそ殺したいとさえ思いました。


でも、

そんなことは出来ません。

ただ笑って生きました


間違っても彼女の重荷になってはいけない。


私は彼女の「親友」でなくちゃいけない。


誰にも言えない想いが黒く濁っていくのは見えないことにしました。


あるとき、私の家に招待状が届きました。

私は彼女の「親友」ですから,勿論出席することにしました。


だって,大好きなんですもの。

だからきっと,この涙はうれし涙なんです。止まらないのは,嬉しいからなんです。


祝いましょう。彼女の門出です。祝えない心は殺しましょう。


あの子の幸せを願って⋯


私は、私の愛を、終わらせましょう


とっておきのおしゃれに心からの祝福。決めたからには最高のお祝いをしなくては。




「○○結婚おめでとう!お前に旦那さんができるとか未だに信じられないよ。」

「うるさい。お前も結婚できると良いな。ーー。」


ついにきたその日


真っ白なドレスを着て笑う「親友」はとても綺麗で私の心に穴を開けるには,

あまりにも残酷でした。


「〇〇だいすき。」

「おう。私もだぞ。」


でもそれは,


「愛してる」


ではないのでしょう?


良いんです。私は気にしません。

私は貴女を愛していますから

貴女の幸せを願いながら、私を呪うしかできないのです。


頑張ってみたけれど,頑張り方を忘れてしまったからどうしようもなかった。


ドロドロでぐちゃぐちゃの愛を捨てるには、

時間が経ちすぎて、忘れることなど出来なくて。


全部終わって,私は一人になりました。


心の中にはあの子への想いの他には何にもありません。


疲れてしまったから、眠りましょう。

私にはなんにもありませんし、消えたって大丈夫です。


「ああ、やっと終われる!」


嫌味なくらい青い空。

初めて墜ちたそれはとても美しくて、私には大きい物でした。


この世に別れを。


貴女に祝福を。

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