指先@綴る想い

「あ…」


「あ…」


 男女ふたり駅のホームいつものばしょ


「お、おはよう。あのさ…、なんだけど。どうなのかな?は付いてたみたいだけど」


 例の件…

 男は昨夜、携帯電話スマートフォンを操作して自らの想いを指先でつづると女へメッセージを送った。


『ずっと好きだった。付き合って欲しい』


 男女ふたりは小学校入学時より十年来の友達だった。

 このたった一行のメッセージを綴る男の指先は震え、頭の中で過去それまで関係ふたり未来このさき関係ふたりが交錯した。

 男は躊躇し、恋心おもいを綴っては消し、消して綴る行為ことを繰り返したが、やがて意を決してメッセージを送った。

 だが、女からの返信こたえはなく、『既読』というメッセージが証のみが画面そこに残された。


「……いま書くからあっち向いて」


 女の言葉に男は黙って頷き、背を向けると携帯電話スマートフォンを取り出した。

 そして、女の指先がメッセージを綴り始めたその時、男の体が緊張で強張った。


『い、い、よ』


 女はその細い指先で男の背中に恋心こたえを綴った。

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【更新無期停止】原稿用紙に込めた想い 貴音真 @ukas-uyK_noemuY

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