Syber-Fantasy:reflexion

H>

なぁマスター。ちょっと見てくれよ


M>

ん?どうした?


H>

店の外に立ってる仔、毎週今くらいの時間に表を通るんだ


P>

なによ?突然


M>

ははは。珍しいなぁ、おまえが女に目星付けるなんてさ


H>

目星って、そんなんじゃないって…


P>

へぇ、可愛いんじゃない?真面目そうな感じね


M>

あぁ、この店には一生縁のなさそうなタイプじゃん?


H>

それがさぁ、いつも見てる。いつもこの店を見てるんだよ


P>

ははぁん、いつもこの店を見てる彼女をあなたはいつも見てたんだぁ


M>

なに?そうなの?おまえ、初めてじゃね?自分から女に目を向けるなんて、どう云う風の吹き回しだよ?それ


H>

そうなんだよ。初めてさ。話もしたことないのにすげぇひかれてるんだ


P>

容姿?あんな真面目そうなのが好みだったの?意外よね~


M>

確かにな、今までおまえが付き合ってきた女はみんなすれてたもんな。強い女ばかり云い寄って来て、おまえは優しいから断らずにとりあえず付き合ってはみるものの、長続きしねぇんだよな?


P>

その優しさって、かえって酷よね?


H>

今までは縁だと思って一生懸命愛そうと努力して、でも愛が芽生えると気付くんだ、コイツを幸福せにするのは俺ではないってさ。相手の事を愛し始めたからこそ切り出さなきゃならない別れもあるんだよ


M>

おまえの愛は今までそんなんばっかだったじゃん!


P>

へぇ、そおなの?みんな振ってきたの?ふ~ん


M>

だから云ってんじゃん?女なんて愛を注ぐ対象じゃないんだよ!女ってぇのは必ず男を裏切る、そう云うように出来てる生物なんだよ!


H>

でた!マスター、またその話?


P>

え?なになに?聞かせてよ、その話


M>

俺は女を愛さない。必ず裏切られると判っていて自分の愛情を相手に注ぐことなんて出来ない!


P>

え?なに?マスターは男しか愛さないって事?あっ!あんた達そう云う仲なの?


H>

違うって。マスターも俺もストレートだよ!女を抱くだろ?


M>

それは性欲の捌け口としてだね。子孫繁栄のために組み込まれた本能だよ。人間特有の愛とは別の話さ。俺はこいつを愛してるぜ。男だから愛せる。こいつとは長い付き合いで喧嘩もしたけど、一度だって俺を裏切ったことはない。そんな相手を愛さずに何を愛すって云うんだい!?


P>

ちょっ、マスター?それって愛は愛でも愛違いだよ!今話してるのは恋愛の話でしょ?好きと云う気持ちを言葉や身体で確かめ合って育んでゆく男女の恋愛の話だってば!


M>

同じだよ。その恋愛の延長線上に俺が話してる愛はあるのさ。で、俺はそんな通過点は要らないって思ってる。くだらないプロセスを踏まなきゃ育めないような先に愛があるとも思えないし期待してない。それだけの話さ


P>

んじゃマスターは相手が女ってだけで頭ごなしに愛情を注ぐ対象から除外してるの?本気でそんな風に思ってるの?


H>

そうなんだよ。マスター、昔からこのスタンスだけは頑なに貫いてるんだよ


P>

呆れた。私に云った話、私を傷付けまいと並べたへたくそな嘘だと思ってた。本気でそんな考え方をしてる人だったのね。使い古しの社交辞令の振り文句だとしか思ってなかったわ


M>

あ、でも頭ごなしにって訳じゃないんだ。ちゃんと女にチャンスを与える用意はある。ただし、一度だけ。そう、一人だけね


P>

ワンチャンスって事ね。で、どんなチャンスなの?


M>

女と云う生物の中に一人でも、たった一人だけでも俺を最後まで裏切らない女が現われたなら、俺は自分の考えを改めるね。ま、所詮女だから移り気や心変わりは当然あるだろうし俺だってそんな無理な要求はしないさ。一生俺の事だけを愛せって話じゃないんだ。裏切らなければいい、ただそれだけの事。動物の母親は我が仔を敵から守るために、オトリになったり立ちはだかったり、時に命まで投げ打って我が仔を守るじゃん?命までは求めないから、最後の最後まで俺の味方で居てくれる女、そんな女がいたら彼女に免じて女性を蔑視してる考え方を根本から改めるよ


H>

でね、そのチャンスを与えた女の事をマスターはママと呼ぶから、マスターにママと呼ばれてる女がこの先いたなら、それが俺への合図なんだとさ


P>

ほー、ママねぇ。きっといるわよ、マスターのママ。でも、私はそのチャンスを与えてもらえる女にもなれなかったって事よね?


M>

あ、ママって呼ぶ合図はこいつしか知らないから、誰にも云うなよ


P>

云わないわよ。でも実際のとこ、さっきの店の外の真面目っ仔との進展の方が現実的な話よね?ま、私はどっちも応援するわ。ずっと心の中でね


M>

ずっとって、居なくなるんじゃないの?


P>

だから心の中でねって云ってるでしょ?


H>

え?なに?連飛になるって話、本当なの?


M>

ああ。意志は堅いらしいよ。俺がシナゴグに連れていったばっかりに…。でも、ま、彼等の方が考え方だとか、マトモだよ。あっちの人間に成れるってえのは羨ましいよ。俺には俺の役割があるからこのIDチップを外す訳にはいかない


P>

そうね。シナゴグで長老の話を聞いた時に私は目が覚めたの。人生だとか、私の生命やライフパーパスがね。こっちでIDに繋がれてシステムに縛られて、そんな中で、私らしい、人間らしい人生なんて有り得ないわ。私にはチャンスが来たの。チャンスはものにするためにものにする事のできる人間にしか訪れないのよ。とにかく、理屈じゃない確信があるから、私はIDチップを外すわ。たぶん2ヵ月か3ヵ月後だから、二人とも、それまでに結果を出してね


H>

こっちからあっちに行くのは、IDチップを外せばすぐに出来るけど、一度IDを捨てたら、もうこっちには戻れないんだぜ


P>

解ってるわ。でも心配はしないでね。私、あんた達の事は一生忘れないから。特にマスター、あんただけは一生忘れたり出来ないわよ。私の人生を二度も変えた男。私の人生で私が一番愛した男。私の本当の人生を見いだす切っ掛けになった男。恨みと感謝の両方を一生抱いて生きていくわ。だから、私を引き止めれるのもマスターだけね。ねぇマスター?もしも私をマスターのママにしてくれるなら、その気になった時にもう一度キスして。黙ってキスしてくれればそれだけで充分よ。私はIDを捨てる決意を変えるから…ま、ないと思うけどね


M>

そんな合図を取り決めちゃ駄目じゃん?俺はそのママの自由意志でそばに居てて欲しいんだ。今からチャンスを与えるよと宣言しちゃったら意味ないじゃん!


P>

わかってるわよ!ただ云ってみただけよ、そんな風にマスターに引き止めてほしいから…


H>

やれやれだな。厄介な男を好きになったもんだ


P>

うるさいわねー!あんたはさっきの真面目ちゃんの事だけ考えてればいいのよ!


M>

そうだ!俺があの仔とおまえの仲を取り持ってやるよ!切っ掛けって云うの?話とか、してみたいだろ?


H>

マスター、勘弁してくれよ!何企んでるんだよ!


P>

あら、面白そうじゃない?私にも一枚噛ませてよね!


M>

毎週同じくらいの時間に通るんだろ?だったら決行は来週だ!来週の今日!まずは俺が話し掛けるから…そうだな、一週間あるから作戦を考えよう!


P>

綿密にね。ワクワクしてきたわ


H>

まじかよ~!





□Drゴン

□シナゴグの美香

□クリエーター

□ウィル

□スペア・コピー


――――――――――――――――――――――

実はこのサイバー・ファンタシー

18話で箸休めならぬ筆休めをしたら数年経過しちゃってます(笑)

今回のリフレクションは冒頭プロローグみたいなもので

本編が主人公の一人称目線で書かれているので

その主人公を俯瞰する意味で本人不在のシーンを書いてみました

物語の続きから結末まで頭の中では完結しているのですが

どうにも筆が進みません

既読の足跡やハートやお星さまなどなど

起爆剤があれば続きを書き進める動力になるかもしれない(催促w)

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Syber-Fantasy 弥生 @yayoi0319

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