紡がれる文章ひとつひとつが丁寧で、そしてエモい

物語の組み立て、構成のうまさ、ギミック、読者を驚かせるというのがとても上手、という作者の素晴らしい技術力は前提として。

今回の作品は一文一文が丁寧で、心に残る。ようは「エモい」
なにかで読んだことがある気がするあいまいな記憶ですが、
「純文学というのは、一つの文章にたいしてコスト(情報量、与える感動)が高い」(記憶があいまいなので純文学が主語じゃないかもしれないし、言い回しが違うかもしれません。悪しからず)
ようは、この作品がものすごくコストが高いってことです。
以下に好きな部分を書き出していきます。
(問題があると指摘されたら消します)



※以下作品内抜粋するため、未読の方はご注意を

『どういう原理か、飲み込めてしまった。』
 (→ここで不死性、というものが「当事者もわからない」ものである、と
 完結そして違和感なく説明できている)

『ねえ、あなたは、幸せだった?』
 (→カニバリズムからこうくるとは思わないじゃないですか……すき)

『同類がいなくなり、何もなくなった。
 何もなくなったから、何でもなかった。
 何でもなかったから、何者でもなくなってしまった。』
 (→最高すぎてなにもいえない)

『ただ、ふわりと小さく死んでしまいたい。
それを叶えてくれる貴方とずっと抱き合っていたい。』
 (→短歌のような、詩を思わせる、手の届く範囲内、きっと二人の中で届くだけの『小ささ』と慈しみ。うつくしい……)


この後はすべてえもいので、未読のひとは読んで確認してください。