チョコレートより、甘いもの
SIN
第1話
「礼さん」
パソコンを睨みつけていた目がこちらに向けられる。
「今日、何の日か、ご存知ですか……?」
「あ?お前の誕生日だろ」
「そ、それはそうなんですけど……そうじゃなくて……」
恥ずかしさのあまり視線を逸らすと、デスクの上に封が開けられたままのポッキーが放置されているのが目に入る。顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。
何考えてんだろ、私。一人でこんなこと考えて……。
すると礼さんがくるりと椅子を回してこちらを向き、細い指をポッキーに伸ばした。そしてそれを私の口に運び込む。
無意識に、開けてしまった。
……パキッ。
……ん?……私、咥えただけ……。
そう思った束の間、礼さんの顔が目の前にあることに驚き身を引くと、サッと立ち上がった礼さんの手が私の腰に回った。再びあの音が耳に届いた時には、唇に温かくてやわらかいものが触れていた。頭が真っ白になって動けないでいると
「何?これが欲しかったんじゃねぇの?」
と私を試すようにニヤリと笑う。しまいには私の唇をペロッと舐めて
「いただき」
そう言い残し、何事もなかったようにまたパソコンに向き直った。
「ぇ、れ、れい、さん……?」
思いが通じた嬉しさと心を覗かれた恥ずかしさで頭がいっぱいで、状況を理解するのに時間がかかった。やっと理解できたと思った時には、彼は私のすべてを知っているかのような悪戯な笑みを浮かべながら、細めた目で、下から私の目をグッと見つめる。
淡いピンクの唇からなんの躊躇いもなく放たれる言葉。
「もっと、欲しかった?」
それがポッキーのことなのか、それとも別のことなのかなんて、考えるまでもない。
チョコレートより、甘いもの SIN @seventeen171122
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