走れ!わたし

@kinnbutu

走れ!わたし

やばいやばいやばい!

そんな言葉しか浮かばない。私は今、あっ絶対人を殺めたことがあるな、みたいな人に追われている。息はぜぇぜぇ言っている。小説や映画ではあんなに元気に走っている場面を見るのに。実際に危機が迫ったらなんと役に立たない教本であろうか。


このままでは捕まってしまう。ここは地元であるが、地元であっても全ての道を知っているわけじゃない。もう既に家への帰り道だって分からない。


この状況を解決するにはふたつの選択があるはずだ。まずその1、敵を格闘術で倒す!


無理だ。私はいかなる戦う術を知らない。格闘術は自分を傷つける

技だ。だが、私は私がいちばんかわいい、私は私を愛している。地球の中心で叫ぶ愛は自分に向けると確信している。


では解決策その2だ。入り組んだ道へ入り込み相手を巻く!これなら現実的であろう!


しかしこれもまた夢物語である。なんせ目の前には都会の人が憧れる田園風景が永遠と続いているのだから。助けを呼ぶような人影も見えない。ただ、畑と田んぼ。田舎の人は田舎が嫌いな理由がよく分かった気がした。


そんなことを考えているの間にも私の体力はどんどんすり減っている。スニーカーなら3年目の状態であろう。ああダメだ、良い表現も浮かばない(これは生来のものであったかもしれないが)


いや、だが追跡者は今どこにいるのだろうか?一心不乱に走ってきた為相手の位置が分からない。ここで1度振り返ろう。たとえ遠くても走ることをやめず、たとえ近くとも諦めないことを決心し、いざ振り向かん!


どういうことだろうか


ここは見晴らしのきく田園である。


そこには誰も見えなかった。


居ないのだ。追跡者が。


よく考えてみれば私は追跡者(仮)の良くない行いを見ただけで怖くなって走り出した。そもそも私は追跡されていたのだろうか?


いやまてまて、そもそも悪い行いとはなんだろうか。あの現場は商店街。人通りが少ない平日とはいえ、何人か交通人はいた。


そこで私はスーツをきたガタイの良い男性が初老の男性から何かを受け取りニヤニヤしている場面を見た。


そこで浮かんだのはアウトロー映画。良くない薬や、武器の受け渡しの場面がフラッシュバックしていた。


そこでこのただの買い物の場面がアウトローな場面に見えたのか?


私は阿呆なのだろうか?


怖いことはなにもおきていなかったのだ。私はわたしの発想がなにより恐ろしい。


恐ろしさによって、暑くなっていた体が冷えてきた。


ああ、クーラーいらず。省エネだ。私は地球にやさしい人間です。


私は来た道を戻り始めた。太陽もいささかエコ人間を称えるようにさっきよりも笑っている。そして私の汗は地面に落ちて地球を冷やすのだ。

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