第四項 アンダーランド・マトリクス ~冥界子宮~

隆起の繭

 ここルク・ディア大陸は女神ルク・ディアにより開闢されたとされる大陸だ。

 だが、だれもその女神ルク・ディアを観たことは無い。

 女神ルク・ディアを信仰対象とする宗教ですら、その明確な記載は存在せず。ただ一筆そうと書かれているのみである。


 世界とは理である。

 その理とは何か?その世界の内側の環境下で誕生したあらゆる情報を保有する物は知らない、気づけない。

 それもまた理だからだ。


 観たことも無い神の名を、ルク・ディア大陸の住民達は知っている。

 それが理だからだ。理が認識し流布したからだ。

 そして理はそうあれかしと容を与える。


 女神ルク・ディアは大地を生み出した存在として認識された、大地に豊穣をもたらす女神だ。

 そう認識されている。

 それが故の容が与えられた。

 その場所に落とされた。

 その墜ちる様は流れ星の如く一筋の光を伴い行われた。

 そして、大地の落着すると途方もない衝撃が大地を駆け巡った。

 これにより発生したクレータは後にエルフの住まう樹海を囲う山脈へとなっていった。


 女神ルク・ディアは長い年月を掛けて大地奥深くへと潜り続けていく。

 そして、その沈降を代償にするように大地は隆起し、ルク・ディア大陸へと為っていった。


 時は経ち凡そ十万年後。


 ルク・ディア大陸の地中深く、この大陸が隆起する為の起点。

 そこは今現在女神ルク・ディアの住まう場所。

 そこに存在するのは真白き子宮。これが女神ルク・ディアである。

 豊穣の神、つまりは生命を生む為の容を与えられ、落とされた後大陸を誕生させ、誰とも知れずひっそりと陸地を存続させる為にそこに在り。

 生命のたねを産み上げる存在が女神ルク・ディアだ。


 子宮と表現こそしたが、その見た目は人種の子宮とは違う。どちらかと言えばかいこの繭だろう。

 表面はまるでシルクを撚り合わせた糸を幾重にも張り巡らせた物であり、非常にきめ細やかな触感をイメージさせる。

 その繊維の隙間から生命の種を排出し、土の中を通し地表面へと上げて行き、新たな生命を大地へと届けるのだ。


 そんな女神ルク・ディアを見つめる存在が居た。

 森田により生み出された霊体のギブインであった。

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ストゥラトゥム・カルパー・テルミヌス ~無際限の摩訶~ Uzin @Uzin

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