金降るジゴク

リョウ

金降るジゴク

 昼頃だった。そして曇りだった。そして空から金が降ってきた。貨幣でなく紙幣だったことは人々の安全上、安心ではあったが、しかしそこは重要ではなかった。一万円がたくさん降ってきた。千円でも五千円でもない。そんな屑は一枚もなかった。

 とにかく僕は、大勢の人がやっているのを真似て、金を集め始めた。これら人々の行動は醜くも滑稽だった。だが狂気的に幸せだった。

 そして僕は急に、独占欲から来る、最高のアイデアを思いついた。

「待てよ。そういえば近くに廃屋があったな。あの薄暗く気味の悪い。あの廃屋なら人も来ないだろうし、金がたくさん転がってるかもしれない」僕はそのアイデアに我ながら惚れ惚れしながら、廃屋に向かった。

 思った通り廃屋には誰一人居なかった。金もたくさんあった。独占だ。だが気になることに、廃屋の屋上が不自然だった。金は落ちてくるばかりのはずなのに、廃屋の屋上からは、金が上に向かって飛んでいた。まさか金を撒いているのはここだったのか。僕は急いで屋上に向かった。

 案の定、大きな筒が設置されていて、そこから花火のように金を打ち上げていた。そして近くには人がいた。

「あんたが金を撒いているのか?」僕は声をかけた。

「ああそうだよ」男はそう言った。

「ずいぶんと羽振りがいいな」僕はあわよくば、全ての金を奪ってやろうと考えていた。「なんでそんなことをしてるんだ」

「生活のためだよ。こうしないと生活できないんだ」

「金をばら撒いておいて? 変な趣味だな」

「そうだ。どうだね君。もっと金が欲しくないか。どうせならここから直接持っていくといい。あるだけあげよう」男はそういって、足元に散々ある金を指した。 

 僕は遠慮せず近寄った。そしたら男は急に僕の首に噛みついた。男は、僕の血を吹きださせるままに、僕を喰らっていた。僕は肉や魚みたいに喰われた。

「生活のためだといったろう」男は一旦口元を拭って言った。「こうやって金を撒けば、こうやって強欲な人間がわざわざこんなところまで来る。そして私は食事にありつける。なに、こんな紙切れなんて安いモノだ。さあまた強欲な人間が来る。餌を撒こう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

金降るジゴク リョウ @koyo-te

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ