僕の考えた最強の戦乙女計画

 よしご飯食べに行こうか。

 

 その提案にヴァルキュリヤは艶やかな銀髪を揺らして「わかりました」と言って立ち上がる。


「ヴァルキュリヤは強くなりたいのか?」

「無論です。幼少の頃からの願望です。しかし持ちえた才能は願望に届き得るものではありませんでした」

 ヴァルキュリアは少し悲しそうにそい答える。


「それはヴァルキュリアが人間だったからだ。君の魂は一級品を超えた特級品だ。でも肉体に引っ張られて、押さえつけられてたんだろうね。今はそれが無いから成長できるはずだ」

「それは本当なのでしょうか?」


 少し期待を持った眼差しが真っ直ぐにこちらを見つめる。

 照れるじゃないか。


「本当だ、すぐにわかる」


 階段を上りゴブリンを見つけ、ヴァルキュリヤに殺させる。

「どうだい魂の存在がわかるかい?」

「はい……。これが」

「そいつを引っ張って自分の器に引き込むんだ。魂人形は魂を食べる事で満たされる。そしてそれが力の源だ。ヴァルキュリヤは器が大きいから沢山食べないと満たされないだろうけどね。そのかわりに力も大きくなる」

「わかりましま……」

 ヴァルキュリヤは素直に従い、おっかなびっくり魂を喰らう。


「ヴァルキュリヤはスキルてしってるか?」

「えぇ、無論です。戦いを生業にしているものなら誰でも知っていると思いますが、魔族は違うのですか?」

「いや、聞いてみただけだ。スキルの内容を聞いても?」

「剣撃Lv6、聖剣Lv4、予感Lv3、身体強化Lv4、魅力Lv8です」

「レベルは?」

「17でした」


ーーーーー

種族:魂人形Lv2

名前:ヴァルキュリヤ

スキル:剣撃Lv6、聖剣Lv4、予感Lv3、身体強化Lv4、魅力Lv8

ーーーーー

 スキルは変わっていないがレベルが下がっているのは何事なのか。

 「了解! まずは腹を満たしてからだ」


◆◆◆


 それから、僕の考えた最強の戦乙女作戦が始まった。

 見た目は既に最強だ。後は能力と装備を集めれば世界征服も夢では無い!


 まずは種族の特徴を生かし、ヴァルキュリヤ最大の持ち味を伸ばす為、魂の扱いを教える事にした。

 ひたすら実践あるのみ。

 自らの魂をエネルギーに返還して使用する。基礎的な事から応用まで俺の知識を詰め込んだ。

 するとヴァルキュリヤは斬撃を飛ばしたり、波動で吹き飛ばすよいになったり、傷一つ付かなくなる鉄壁になったりと無茶苦茶だった。戦えば俺に勝ち目は無いだろう。


 それからヴァルキュリヤが装備している防具や剣に魂を憑依さた。これは実験みたいなものだった。本人と剣や防具のスキルが重複しないかなぁ、と言う願望で初めてみたが、結果から言えば重複したと思える結果が出た。

 しかし連携が難しいらしく、その場ですぐ使い者にはならず、鍛錬が必要そうだ。

 その実験を見ていたゴブリンソードが俺に剣を振らせようと手元でクルクル回っていたが、俺は無視して寝たフリをした。

 

最近では人間の街に情報収集するついでに買い物を頼んだので、気持ちいい寝床が出来、俺の魂は御満悦だ。

 ヴァルキュリヤもよく食事がてらに人間の街に繰り出すようになった。いったいどんな天災をおこしているかは知らないが、レベルを上げて帰ってくるあたり、お察しである。

 しかし、稀にお見上げを持ってきてくれる。

 オリファルコンの剣が来たときは、これがファンタジーソードか! と馬鹿みたいに興奮していたら、次の日、ヴァルキュリヤがニコニコ顔で六本持ってきた時はオリファルコンの価値を疑うようになった。

 最初の一本だけ貰い、あとは魂を憑依させてヴァルキュリヤにあげた。六本全部。

 俺が剣を翼のようにしていたらカッコいいと熱く説明したら、ちょろいヴァルキュリヤは即座に翼をはやした。


 ここまでくると、本格的に『僕の考える最強の戦乙女計画』は完成に近づいた。


 あとはひたすら経験値を稼ぐのみだが、そろそろこのダンジョンに偵察や援軍が送られてくる。


 初めての弟子と言えるヴァルキュリヤは戦闘面は抜群の力を見せている。しかし他人の魂操は全然ものにならなかった。

 こうなってくると技術云々では無く、種族特性と考えるべきだろう。


 それにしても人間の部下が出来て、とても楽になった。会話とはこれほどまでに素晴らしいからと思うほどスムーズに事がすすむ。


 それでもゴブリンソードは俺を支えてくれた相棒だから贔屓にしている。やつも満更でもなさそうだ。


 最近はヴァルキュリヤに部下達の指示もある程度任せてみたが、中々様になっていた。流石隊長だっただけある。

 そして何より美ししい。それだけで目の保養になる。美しくて強い。完璧だ。


 これで後はヴァルキュリヤに直属の部下をつけてヴァルキュリヤ隊が出来れば完璧だ。


「七瀬様、お食事をお持ちしました」

「ありがとうヴァルキュリヤ、そこにおいといて」

「はっ」

 

 ぶっちゃけ俺はほとんど動いていない。人間だったらとんでもなく太っていた自身がある。それでもヴァルキュリヤの魂を人工的に再現出来るように毎日、鍛錬と研究を続けている。


「僭越ながら私がお食事のお手伝いさせて頂きます」

「いや、そのままでいいよ」

 ショックで膝をついてるヴァルキュリヤを無視して喰らっていく。

「それよりどうだい?スキル10レベルの壁は突破したかい?」

「いえ、申し訳有りません。未だ超えれておりません」

 しょんぼりと顔を落としている。

「気にしなくていいよ、10がMAXて事かもしれない。ましてや人間界では9が最高らしいじゃないか、ヴァルキュリヤはもうそれを超えたんだ」

「全ては七瀬様のおかげでございます」

「切っ掛けを作っただけだよ、それを受け入れたのはヴァルキュリヤだ。それより人間達はどうだい?」

 最大の案件にうつる。

「現在、ラマの街まで来ていると。隊は100名程度のようです」

「本命だと思うかい?」

「いえ、様子見と言った所でしょう」

「そうか、餌さえもっと潤沢ならなんとでもなるんだけどね。このダンジョンシステムは単独では欠陥だね」

「御命令頂ければ即座に殲滅してまえりますが?」

 ヴァルキュリヤは勇ましく、堂々と言い切る。実際問題なくやれそうな気はするけど。

「いや、ダンジョンの養分は必要だこちらに入れてからにしよう」

「かしこまりました」

 その顔は少し残念そうだ。最近暴れ足りないのだろう。

「その時は頼むよ」

「お任せください」

 頼もしいね。

 

 さぁて寝よう。最近の趣味はもっぱら睡眠になった。

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戦勝のダンジョンモンスター出勤録〜配下の魂人形を従え魔王軍を成り上がる〜 NEET山田 @neetyamada

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