第16話 いろんな戦い

「あーーっ!!やばいやばい」

「だから、大丈夫なのかって言ったのに」


 あくる日の平日の美亜の部屋。美亜は満身創痍でイラストを描いていた。


 ここ最近、学校に行ったりいろいろ大変そうだったので、ちょこちょこ進捗を確認していたけれど、生返事で「あーうん、それよりさ、一緒に遊ぼ」って言われて大丈夫なんだろうなって思ってたんだけれどやはりダメだった。


 普段はこんな事ないんだけれど、学校へ行くストレスとかあったんだろうな。まぁ、仕方ない。


 とはいえ、編集さんとかに美亜のメンタルケアを頼まれていた僕としては放っておけないし、仕事なので多方面に迷惑をかけるため、今日は学校とバイトを休み美亜のお手伝いをしている。


 とはいえ、ぼくはそこまで手伝えることはないので美亜のして欲しいを事を聞く雑用係だ。


「あ、そうだ。いい事思いついた」

「なんだい?おじさんに何でも言ってみなさい」

「おじさん、飴さん頂戴。……って違う。ふざけている場合じゃないの!そこに座ってお兄」

「はいはい」


 少しは焦っている気持ちも落ち着いたな。


「座ったけど、何するの?」

「よし、少しお兄はきついかもしれないけれど、頑張って」


 美亜はない事もなかったかのように僕の膝の上に座り、黙々とペンタブに書き込んでいく。


 まぁ……いっか。





「終わったー!!」

「お疲れ、美亜」

「いぇーい!」

「イェーイ!」


 仕事終わりの妙なハイテンションでハイタッチをする。


「お兄、ありがと、お兄のおかげで私の信用が守られたよ」

「そうだぞ、お兄に感謝するがいい」

「ほんとに、ありがとー!!」


 そのまま某プロレスラー並みのタックルをかまし僕をベットに押し倒す。そして、急に美亜は蕩けたような顔をして僕に跨りこういう。


「ふふっ。なんだか、エッチな雰囲気だね?困難を一緒に乗り越えて、二人はそのまま愛を確かめる。そんな展開が王道じゃない?」

「確かにそうだけれど」

「そして、こういうの、やっぱり私、あなたの事が、お兄ちゃんの事が大す—」


 そこで、急に玄関のチャイムが鳴る。


 危なかった、シスコン、ブラコンの域を超えてしまいそうな雰囲気だった。やっと脱して?来たと思ったのにマイナスの域に踏み込むところだった。


「もぅ、こんな時に。ちょっと、まっててね、今すぐ戻るから」


 美亜がスキップをしながら部屋から出ていき、リビングに向かい玄関用のモニターを確認しに行く。


 だが、数分待ってみて、なんだか、玄関の方からが騒がしい。ドンドンと叩かれているような気がする。


 なんだろうと思い、美亜の部屋をでて、玄関の方に行こうとすると


「待って、お兄。お願い、行かないで!!」


 美亜が鬼気迫る顔でリビングから出てきて僕の事を呼び止める。


「なんで?」

「そこには悪い奴らがいるの!この世を脅かす悪魔なの。あったら食べられてしまうの!」

「なるほどな。じゃあ、そいつらが危害を加えないためにもお兄戦隊のレッドたる僕が行かないとな」

「ダメだわレッド!今のままでは負けてしまう!」


 美亜を引き摺りながら玄関にたどり着き、ドアを開けると…。


「あ、こんにちは、愁先輩。それと、美亜ちゃんも」

「こんにちはです。愁さん」


 二人が笑顔で挨拶をして、美亜はむくれた顔をしていた。


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 妹がなかなか兄離れをしてくれない。 かにくい @kanikui

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