おかえり
ぜっぴん
おかえり
うつらうつら、重い瞼を持ち上げながら首を右側へ捻る。目線が運ばれ窓へ送られると青々とした空に、疎らに散在する雲が力なく悠々浮かんでいるのを見た。
今日は晴れているのか。気づかなかった。
昨夜の熱りはまだ冷めきっていなくて、胸の奥から生温い焦りがこの私を圧迫している。
あれから何時間経ったろう、私は今布団にどでんとひっくり返っているが、さっきまで少し外出していた。
家からの出発は今日の有明、計画とは違って遅くなってしまったのは実際に執り行うと、イメージと違ってもたつくは、ちょっとだけ躊躇したりするは、そして、本当に実行してしまったという余韻が、はやる気持ちを押し潰して体に力が入らないわで段取りが悪くなってしまった。
とりあえず私は帰路に就きながらも、正直不安な気持ちに締め上げられている様な思いでいたが、次第に落ち着きを取り戻した。
心配することは無いはずだ、前もって準備をした、懸念事項は見逃さずに潰した、完璧のはずだから。
家に到着して服をかなぐり捨て一旦風呂に入った。その頃にはとっくに朝で、出勤、登校で通り掛がかる人々。彼らの目線を窓掛けで遮断し、今までずっと寝転んで、朝の喧騒から空気が切り替わる時まで懸命に待ち続けていた。
どうやらもう、人の目からは開放される時間帯の様だ。これでいい、この私を朝に目撃した者はいない、いつもより長いこと眠っていただけになっている。
私はようやく、ただいまを言える。
どうしようか、ご飯を食べる気分ではないし、公園で太陽を浴びてリフレッシュするのもいいな。
私にはもっと休憩が必要なはずだ。私は、人を殺したのだから。
7月11日、蝉の声が煩い。
おかえり ぜっぴん @zebu20
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