第4話 離れた二人の心
「ったくー。お前が急に居なくなるから、心配したんだぞー」
シェリルを引っ叩いたまま、逃走をしてしまったオリビアの穴埋めとしてチェイスが教師たちに説明をしてくれていたらしく、オリビアが帰ってきて謝罪をしてやっと解放された。
「チェイス・・・ごめんなさい」
人に滅多に謝らないオリビアが素直に謝ったという事実が受け止めきれなかったチェイスは、彼女のおでこに手を置く。
「何?」
「いや、熱でもあるのかなって」
「失礼ね・・・。悪いと思ったから、謝っただけよ」
チェイスの手を振り解きそのまま寮へ戻ろうとした時、クロユリ寮の前でシェリルが立っていた。
「シェリル・・・」
「オリビア、ちゃんと話そう。私たちのこと」
これ以上、シェリルを魔の国のことで巻き込んではダメ。そう、ここでもう終わりにしていこう。シェリルは、陽の光を浴びて生きていく人。私と関わってしまうと不幸になる。
オリビアは、そのまま無言でシェリルの隣を過ぎ去っていこうとしたが、彼女に腕を掴まれてしまう。
「待って!!」
「離して!!」
「いや、離さないから!!オリビアがちゃんと私と向き合ってくれるまで!!諦めないから!!!」
なんで、そんなに眩しいの?なんでそんなに・・・真っ直ぐなの。
「もう、放っておいて・・・。叩いたことは、謝るわ・・・ごめんなさい」
「私は、謝ってほしい訳じゃない!!ただ・・・また親友に戻りたいの。私たちの友情は、こんな争いに負けるモノだったの?!!」
こんな争い?
彼女のその言葉に、オリビアはカッとなってしまった。
「こんな争い?こんな争いですって??!人が何人死んだと思っているの?!私たちは、仲良くなんてしていい立場の人間だとでも思っているの?!」
「そんなの関係ない!!オリビアは、逃げてるだけでしょ?!」
「いいえ。私は、ちゃんと自分の立場を弁えてるわ・・・。ちゃんと現実を見てね。逃げているのは、シェリル・・・あなたよ」
「こんなのおかしいわ!!チェイスくんもなんとか言ってよ」
「リ・・・シェリル様。オレたちは、負けた一族なんです。あなた様の優しさは、今のオリビアにとってとても・・・残酷なものです」
「チェイスくんまで・・・」
今のチェイスには、それしか言えなかった。本当は、また三人仲良くしたい。でも、出来ないそれを誰よりも分かっているのはオリビアだった。
「チェイス・・・シェリル様を安全に寮までお送りしてあげて」
「かしこまりました」
「そんなの要らない。・・・オリビアは、変わってしまったのね」
オリビアの手を解き、そのまま走ってその場から去ってしまうシェリルだった。
「チェイス!!」
「分かってるよ」
チェイスは、そのまま走って帰って行ったシェリルを追うチェイスであった。
一人になったオリビアは、廊下の端でうずくまっていた。
「シェリルのバカ・・・」
そう涙声で呟いた。
ブルーローズガーデン ひな菊 @hinakiku
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