空に走る

ゆうすけ

第1話 雨が降りやむまでは帰れない



「どうしてなの? なんで? ねえ、ツカサ! 話が違うじゃない! 何とか言ってよ!」

「何度も言いたくないんだ。俺たち、もう終わりにしようってことだ。おまえとはもうこれきりにする」

「イヤよ! そんなの、絶対イヤ! ねえ、ツカサってば!」

「おい、やめろよ! 危ないじゃないか。運転中なんだ。離せよ! ハンドル掴むの、やめろ! 事故るぞ!」

「離さない! ツカサに捨てられるなんて……、そんなのイヤ! ツカサに捨てられたら、私、生きてても意味ない!」 

「おい! 離せ離せ離せ!」

「イヤよ! 離さないから!」

「ああーっ!」


 キキキキキー

 ドスン



 ◇


「それでは次のニュースです。昨日の午後十一時ごろ、神奈山県川北市の県道で、乗用車が谷に転落する事故がありました」


「乗用車は、山側の側壁に衝突した反動で対向車線に飛び出し、谷側のガードレールを突き破っておよそ六十メートル下の谷に転落。車内からはこの車を運転していたとみられる五十島詞いそじまつかささん、三十一歳の遺体がみつかりました」


「現場は片側一車線のカーブの続く山道で、事故当時、雨が降っていました。警察では五十島さんがスピードを出しすぎてカーブでスリップし、運転を誤ったものとみて調べています」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る