第3話 子ども

怪談を蒐集するためにインタビューをしに行くと、しばしばおかしな人に遭遇することになる。

「この子は私の子どもなんです!ね?可愛いでしょ?この子人見知りなんですけど良い子なんです。」

会って早々こんな事を話されても返事に困る。昼間のファミレスというチョイスも間違っていたと後悔したがもう遅い。怪談を蒐集するためにわざわざインタビューまでしに行く私だって世間では「おかしな人」に分類されるだろう。周りからの好奇の視線に耐え、とりあえず話を聞く。

村上さん(仮名)が子どもだと言い張っている“それ”は白くて小さいアザラシのぬいぐるみだった。黒いボタンでできた目と刺繍で作られた鼻と口が特徴だ。長年一緒にいるのか少し灰色に薄汚れていた。

「はぁ…それでなぜ私を…?」

すると村上さんは目をカッと見開いて早口で捲し立てた。

「この子ね、たっちゃんって言うんです!ずっとずっとずっとずっとこの子が大好きで話しかけていたらある日ちゃんとお話してくれるようになったんです!それで私はたっちゃんを産みたいしたっちゃんも私に産んで欲しいんですがどうすればいいですか??毎日毎日話しかけてきて産んで欲しいって頼まれるんです!!」

1番怖いのはお前だよと言いたくなるのをこらえながら1000円札を置き、店を飛び出た。他の客からの視線が痛かったのもあるが、彼女の狂気に自分が耐えられなかった。

後日、村上さんからメールが届いた。彼女はメールで私に依頼をし、メールでやり取りしていた。

恐る恐るメールを開いた。


[件名]私のかわいいたっちゃん

[本文]たっちゃんが産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた産まれた可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる


添付ファイルがあったが未だに開いていない。

勇気のある読者がいたら転送するので是非代わりに見て貰えないだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

令和伝説 ナムマン @numbman200319

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ