液体呼吸
藥
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人の不幸を、後悔を、可哀想だと勝手に物語を見るかのように同情する自己満だけのやつもいる
だから、絶望とか、後悔とか、簡単に口に出せる側の人間なんて信じるもんじゃない
苦しいなんて、誰が、誰に、何の為に伝えようなんて考えるんだよ
我慢すれば、苦しくて、息がし辛くても、いつか慣れるのに
涙なんて、水の中にいれば、気づかなくて済むのに
無かった事に、なるのに
勝手に、可哀想な人にしないでくれ
生まれた時からこうだった
生まれた時が、絶望だった
生まれた事が、間違いだった
だからもうそれ以外、後悔も絶望もしない
もう何も、考えなくなった
痛い事も、無くなった
逃げたから
逃げられたはずなのに
ずっと、息はできないままで
また、あの痛みを、苦しさを、求める自分がいた
汚くて汚くて、とてつもなく醜い自分の中身を見た気がした
逃げたのに
戻ってきた
早く死ななきゃいけないのに
まだ、生きてる
また、息が苦しかった
あぁ、また、僕は此処に戻ってきてしまったんだ
自ら望んで、此処に、戻ってきた
痛くて、苦しくて、沢山泣いて、何度も何度も
毎日のように死にたいと願った
でも、必ず死ねる確証なんて何処にも無くて
死ねなかった時の事を考えたら、何も、出来ないままだった
あんなちっぽけな薬一瓶じゃ、死ねるなんて、本気だった訳じゃない
でも、それでも、信じたかった
このまま、眠れば、
そうすれば
もう
目を開けなくて済むと
思いたかった
信じたかった
死ねなかった
死ねなかった
そして
僕の短い人生二度目の
絶望
絶望した
死ねなかった事にでは無く、
まだ生きようとしている自分の身体に心底吐き気がした
薬のせいか、思考のせいかはわからないが
只、とてつもない吐き気がした
そこから歯止めは効かなくなった
薬の量は増えた
血の量も増えた
自傷が止められなくなった
長袖しか、着られなくなった
利き手とは逆の手は、袖を捲らなくなった
止まらなくって、止められなくって
ふと手が止まった頃には、
ベッドに血溜まりができて
もう、誰にも言い訳なんか、出来なくなっていた
どうすれば良いのか考えていた
こんなに血が出ていたことより
シーツも通り越して、ベッドマットにまで染み付いたこの紅い澱みを
ちゃんと、溢れないように、一滴も、零れないようにしてた筈なのに
何かがプツンと、途切れた
あんなに吐いても、誰も気付かない
こんなに切っても、誰も気付かない
こんなに苦しくても、誰にも気付かれないなら
もう、大丈夫
何をしたって、僕は、誰にも見られてなんかない
腕を捲れるようになった
人の顔色を窺わなくなった
夜、帰りが遅くなった
何度も、人と身体を重ねた
きっと、何をしても、何も変わらない
僕が変わったって、何も周りは変わりはしない
どう頑張ったって、あの頃には戻れないし、戻らない
もう、何をしても僕を殴り、罵倒するあの人達は戻ってこない
それなら、僕が何をしたって、何もしなくたって
風に頬を煽られ
現実との微睡の中で
息のし辛さに気が付いた
あぁ、これはきっと
あの時の匂いだ
あの時と同じ
あの時も、これくらい風が冷たかった
あの時もこれくらい、風が暖かかった
全部、記憶はぼやけてるのに、身体が色んな感覚で、覚えてる
忘れたくても身体が、覚えてる
鮮明に記憶しているよりタチが悪い
只々、苦しく、水の中にいる様な気分
漠然と覚えている苦痛に、沈められる気分だ
ぬるま湯に、使ってる気分
どんどんと、使い物にならなくなっている
どんどんと、普通に引き釣り込まれている自分を見て、吐き気がした
普通になんて、なれもしないのに
どっちにもなれない自分に、嫌気と、呆れと
それから、何かわからない感情が付いてきた
感情は、プラスになる事が無いと、何時か、何処かに、置いて来てしまった
だからか、この気持ち悪い感情とやらを
上手く理解ができない
こんな僕の、汚い話も
誰かが見れば、可哀想な御話になるのだろうか
液体呼吸 藥 @1224_di
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