start.

「いやあ、不思議なこともあるもんだ」


 さっき車にすごい勢いでぶつかってきた女の子。


 膝をすりむいただけで、無傷だった。


 特殊心裡アドバイザーの仕事柄、生きることとしぬことを、かなり見つめてきた。

 分かったことはふたつだけ。しのうとすると、人はしぬ。生きようとすると、人は生きる。これだけ。


 さっきの子。


 生きることを、あきらめていた。それでも、生き残った。怪我して、下手すると死ぬほどのぶつかり具合だったのに。それでも、生き残った。


 彼女は、生きようとしている。ものごとの考え方が分かっていなくて、自分の人生について誤解しているだけ。


「不思議で終わらせちゃ、いかんな」


 ああいう人の良いばかが、たいてい人の苦労を背負って立って十字架に磔になる。


 そうはさせない。ぶつかったのが、俺だから。この出会いを期に、彼女は変わる。


「それにしても、事故にならなくてほんとよかった」


 しぬかと思ったまじで。

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意味 春嵐 @aiot3110

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