1-4
「このバッジは、自分自身が持っている能力を引き出してくれるの」
人には誰にでも、何かしらの能力が備わっている。それを、大半の人は使いこなせずに一生を終えてしまう。
リズが持っているこのバッジは、その人が生まれ持った能力を引き出してくれるものだ。
と言っても、すぐに完全に発揮できるわけではない。
例えば、魔法の能力がある人がこのバッジを使っても、ゲームのように強力な魔法が使えるわけではない。
結局のところ、努力を重ねてその能力を使いこなせるようになる必要がある。
リズが持っているバッジは、そのきっかけを作ってくれるものに過ぎない。冒険者にとっては、必須アイテムらしい。
「だけど、そのバッジを使ったところで、いきなり戦えるわけじゃないんじゃ…?」
「うん、まあね。でもその辺は私が教えてあげるわよ」
「大丈夫かよ…」
「はいはい、ゴチャゴチャ言わないで、バッジを手に取って!」
リズからバッジを受け取ると、突然、バッジが光りだし、その光がジュンの体に吸い込まれるように入っていった。
「うん、これで君の能力が引き出されたわね」
引き出されたと言われても、特に何かを感じるわけではない。
本当に何かが変わったのだろうか?
「そうね。君は、自分に適した武器を出すことができるようになったはずよ。さあ、手に武器があるイメージをしてみて」
ジュンは、手に何か武器がある姿をイメージしてみる。すると、光とともに、拳銃と大型の剣が現れた。
「うおっ、何か出てきた!」
「これが、君と共に戦う武器よ。剣と銃ってところかな?2種類出るなんて、珍しいわね」
「これが、自分の武器なのか?」
初めて見るものなのに、なぜか手にしっくりと馴染んでいる。この武器が、自分にとって適切なものなのかもしれない。
「さて、もう一つ。胸元のバッジに注目して」
バッジには、〆切マークのような模様とローマ数字の「I」が書かれている。
「どうやら、君の職業は『見習いヒーロー』だね」
「見習いヒーロー?なんだか、あまりパッとしない職業のような…」
「まあ、最初はそんなもんよ。後は君次第。レベルが上がれば、別の職業にクラスチェンジするわ」
最初はレベル「Ⅰ」からスタートで、レベルが「Ⅶ」なら、かなりの上級者らしい。
「どうすればレベルが上がるんだ?」
「戦ったり、人助けをしたり、そんなところかな」
「なんだか、曖昧だなぁ…。ところで、リズは何の職業なの?」
リズのバッジには、星マークとローマ数字の「Ⅸ」が記載されている。
「これは、異界冒険家ね」
これまた、あまりピンと来ない職業だが、冒険家は旅をする時に適している職業だそうだ。
話を聞いても、正直あまり理解できていないが…。
ちなみに、リズのレベルは「Ⅸ」と表示されている。さっきの話では「Ⅶ」でも上級者。彼女はさらに上の実力を持っていることになる。
見た目は自分よりずっと若いのに、相当な実力者なんだろうな、彼女は。
「さて、これで戦う力に関する問題は解決ね。あとは実戦で色々と教えてあげるわ。」
とりあえず、リズを助けるための準備は整った。
次の問題は、発信機がどこにあるかということだ。反応したということは、近くにあるはずだ。
「他に手がかりはないの?」
近くと言っても、ジュンが住んでいる江戸川町は建物が密集している。範囲が広すぎる。
「この近くに、数十人規模の人が入れる建物があればいいんだけど」
リズが言うには、彼女が侵入した時、少なくともそれぐらいの人数の人を見かけたという。
数十人規模の建物と言えば、学校や公民館を思い浮かべる。
いや、学校や公民館はまだ開いていないから、その線は低い。
他に考えられるのは…
「あれ?何の音だろう?」
外から、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
「ああ、これはパトカーのサイレンだね。何か事件でもあったんじゃないかな?」
しかし、音が近い。こんなに多くのパトカーのサイレンが聞こえるということは、近くで何かあったのだろう。
しかも、1台や2台じゃなく、かなりの数だ。
「やけに多いな…」
ジュンはベランダから外を見た。パトカーが集まっているのは、家の近くにある工場だった。
数十人規模の人が入れる建物。その条件にぴったりな場所が、目の前にあった。
「まさか…」
「ジュン、どうしたの?」
「いや、リズが言ってた数十人規模の人間が入る建物があれなんじゃないかと思って。これだけ警察が集まるってことは、何かあった可能性がある」
「なるほどね。手がかりもないし、行ってみる価値はありそうだね。よし、行こう」
次の更新予定
探検隊ルイーザと不思議な物語 旅立マス @jhlucky839
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。探検隊ルイーザと不思議な物語の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます