LAG = Life Assistance Group

「……今、なんつった?」

「ようこそ、LAG《レグ》へ」

「何だ、そのレグってのは」

「まあ、座れよ」


 俺は目の前にいるハルマという男から聞いた事のない単語を耳にした。

 今から20分前――。


 俺はワケも分からず敵を無双しまくって脱出した場所で、外に残っていたもう一人の敵に撃たれて倒れた。そこまでは覚えている。

 たまたまそこを通りかかったとある男が俺を助けてくれた。どうやら俺は撃たれていなかったようで、力尽きて失神しただけらしい。

 そして俺はその男にこの場所まで運ばれた。そこで目を覚まし、今に至るということだ。その男というのがハルマだ。


「さ、説明を始めようか」

「ああ、頼む」

「まずここはLAGの本部だ」


 室内はまあまあ広い。一点にモニターが集結しており、そのモニターにはよくわからない英語と数字が羅列られつされていたり、監視カメラの映像のようなものが映っている。


「――そんで、僕がさっきから言ってるLAGってのは【Life Assistance Group】の略称なんだ」

「ライフアシスタンスグループ……【生活の援助】?」

「その通り。僕たちは民間の救援をしているんだ」

「はあ。イマイチ分からないんだが……」

「ほら、5年前に【あの事件】が起きただろ?その時に暴れだしたヤツらを徹底的に潰そうって魂胆さ」


 あの事件――思い出したくもないが、5年前に量産型家庭アンドロイド「ミライ」が突然暴走し6人を死傷させた事件が起きた。あれから5年経つが、既に全国に普及してしまった「ミライ」を回収する術がなく、今もどこかで犠牲者が出ているという。


「潰すったって、どうすんだ?国が回収できてないんだから無理だろ」

「無策ならね」


 ハルマがニヤリと不適な笑みを浮かべる。


「何か手があるのか?」

「もちろん。このグループには6人の精鋭がいるんだ。キミも入れたら7人だね」

「まだ入るとは決まってないけどな」

「こっちは命を助けてあげたんだぞ?」

「それはマジで感謝してるよ。――それで?」


 俺が話の続きを催促さいそくすると、ハルマはスッと立ち上がりモニターをいじり始めた。何かを入力しているようだ。

 やがてモニターにある画面が映し出される。


「何だコレ?」

「見ての通り、僕たちが今まで調べてきた『ミライ』の詳細さ」


 モニターには事細かく、写真付きで様々な説明が書かれている。文字量に目がチカチカしてくる。


「そして、この情報を国に売る」

「は?」

「そうしたら、国は僕たちに援助してくれるだろう。その恩恵を受けて僕たちは民間人を援助する。ね、面白いでしょ」

「そう簡単に――」

「――いくさ。実はもう明日にもデータを送る予定なんだ。それだけじゃない。今までにも研究報告はお偉いさんに目を通してもらってたから援助をもらうのは確実と言っても過言じゃない」


 ペラペラとすごいことを言い放つハルマ。その顔は自信で満ち溢れている。


「……あんたらがすごいのはわかったよ。それで、俺にどうしろと?」

「キミにはぜひ『ミライ』と戦って欲しい」

「あ?」


 またすごいことをサラッと言いやがった。


「6人中4人は戦闘員としてフィールド調査を行ってる。手当たり次第ヤツらを排除するんだ」

「まだ情報を売ったわけでもないのに、大丈夫なのか?」

「大丈夫。と僕が判断した」

「お前なぁ……」


 そんな自信どこから湧いて来るんだ、と口にする前に目の前に差し出されたハンドガンにツッコまざるを得なかった。


「おい、何だよこれ」

「ハンドガン」

「そうじゃなくて。これを差し出してどうすんだよ」

「これで、戦って?」


 どうやら俺はとんでもない野郎に命を救われてしまったようだ。

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僕の灯が堕ちるまで 碧生 なの @okome_ume

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