第8話 好きになってもいいのですか?
全てのゴーレムを破壊した事により他の仲間達と連絡を取ることも、宇宙に帰って行くことも出来なくなり、鬼達はガクリと落ち込み戦意を喪失してしまったようであった。
サヤは彼らを人目のつかない離れ島へと移した。その様子を見て、幻次郎は「まるで鬼ヶ島のようだ」と笑っていた。
「サヤさんはこれからどうするの?」咲が聞いてくる。
「私のゴーレムも地球に落下した時に動かなくなってしまったわ。もう帰る事は出来ない」サヤは遠い空の彼方を見つめた。
「サヤさんさえ良ければ……、俺達と一緒に暮らさないか?」幻次郎は少し頬を赤く染めながら呟く。
「でも、そんないつまでもご夫婦の邪魔は出来ないわ……」サヤは、幻次郎と咲の顔を少し寂しそうに見た。それを合図にしたように、二人も目を合わせてから笑う。
「あっ、勘違いしないでくれよ、俺達兄妹だから……」その言葉を聞いてサヤはキョトンとした顔をしている。
「堪忍してよ。私はこんなの変な男は選ばないよ」咲はウンザリしたように吐き捨てる。
「なに!」
「なによ!!」二人は取っ組み合いの喧嘩を始める。
「じゃあ……、それじゃあ・・・・・・」サヤはなぜか泣きだした。
「えっ!」その様子に幻次郎は驚きを口にする。なにか彼女を泣かすような事を言ってしまったのかと二人は気まずそう目をして顔を見合わせた。
「私……、幻次郎さんの事を好きになってもいいのですか?」彼女は恥ずかしそうに上目遣いで幻次郎を見つめた。
「えっ・・・・・・、あ、ああ……、俺のほうこそサヤさんの事を・・・・・・・、いや俺はもうサヤさんの事が好きだ」少し斜め上を見ながら幻次郎は返事を返した。
その言葉を聞いたサヤは幻次郎の体に飛びつくように抱きついた。その行動に答えるように幻次郎もサヤの体を抱き締める。
二人は熱く長い抱擁を交わした。
「あああ、ごちそうさま。私もどこかに良い人いないかしら」その横で咲は呆れたように深いため息をついた。
おしまい
阿僧祇(あそうぎ) 上条 樹 @kamijyoitsuki
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