第7話 偽物
「約束通り咲を返せ!」幻次郎は拳を握りしめた。
「よし返してやる!」ゴーレムは咲の体を乱暴に投げ飛ばした。サヤがその体を受け止めた。
「サヤさん、咲は大丈夫か!?」ゴーレムから幻次郎は目をそらさない。
「大丈夫です!気は失っているみたいだけれども」サヤは咲の呼吸を確認した。
「それでは早速、試し斬りをしてみるか!!」ゴーレムが幻次郎の頭上に阿僧祇を振り上げた。
「くっ!」無念で幻次郎の口元が歪む。しかし、ゴーレムの振り上げた刀の軌道が変わる。
「やはり裏切り者を先に斬るか!」サヤと咲に向かって刃先が振り下ろされる。
「やめろ!」幻次郎は二人の前に立ちはだかり十字受けの構えを取る。
「幻次郎さんの腕が!」サヤは怖くて目を閉じてしまう。
キーン!!!!!
金属が激しくぶつかる音が響き渡る。
「えっ!?」サヤはその光景を見て唖然とした。
当然、幻次郎の両腕が斬り落とされていることを予測していたサヤであったが、目の前では、振り下ろされた阿僧祇の刃が幻次郎の両腕で受け止められていた。
「なっ、なに!さては騙したな!貴様、この刀は偽物か!」ゴーレムは刀を放り投げると殴りかかるように鉄の拳を放った。二人を安全な場所に移動するように即したあと、幻次郎は回転しながら
そして、ゴーレムが投げ捨てた阿僧祇を拾い上げ構える。
「そのような偽物で何が出来る!」ゴーレムの中の鬼は鼻を鳴らすように笑う。
幻次郎は無言のまま、ゴーレムの腕めがけて阿僧祇を振り下ろした。ゴーレムの腕が真っ二つに斬れて宙に舞う。
「なっ、なんだと!」無くなった腕を見てゴーレムは戸惑っている。
「俺の腕には、阿僧祇と同じ鉄を使った腕輪が巻いてある。それに、いくらこの阿僧祇が名刀であったからといって誰が振っても同じように斬れる訳ではない。俺はこの阿僧祇を扱う為にガキの頃から血の小便が出る位、とことん鍛えられてきたのだ!」幻次郎は阿僧祇を軽々と振り回す。まるで軽い木の枝でも扱うように。
「凄い!」その様子を見て、サヤは唖然としている。
ゴーレムの目から光線が放たれる。その光線を阿僧祇の刃で跳ね返す。その光が他のゴーレムに当たり爆発する。
「き、貴様!」ゴーレムが群れになって襲いかかってきた。幻次郎は低空にあるゴーレムを踏み台にして空を駆けるように、次々に斬り捨てていく。その光景にサヤは声が出せずに呆然と口を開けて眺めていた。
「お前で最後だ!」幻次郎は全てのゴーレムを斬り捨てた。しかし、その中にいた男達に死者はいなかった。
こんな時にも加減をしながら戦っていた事に気づき、サヤは完全に脱帽した。
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