KILL ME WITH YOUR HANDS
ぽぽ
思考する女の子
幸せなんかいらない。お金なんかいらない。綺麗好きだからせめてシャワー付きの住む家くらいはいるけど。愛情もいらない、そう、愛情なんか絶対にいらない。そんなものもらったところで余計な不安がついてくるだけだから。疑いとか、裏切りとか、考えるの疲れるの。もう仕方ないんだ、不信なの。私の人生ハッピーエンドかバッドエンドかわからないのつらいの。ねえお願いだから1人で居させてよ。もう何も期待したくないの。どうしてあなたは私に優しくするの。気持ち悪いよ。やめてよ。あっち行ってよ。お願いだからほっといてよ。なんで私の誕生日を覚えているわけ?私はあなたの誕生日を知ってるし私はあなたの誕生日には死ぬほどプレゼントをあげるけど私はいらないんだよ。私になんてお金かけなくていいんだよ。カモミールの香りのキャンドル?そんなものもらったら捨てられないでしょ。キャンドルに罪はないんだから、せめてお菓子とかにしてよね。あのね、あなたが傷つくことはわかっているから私は何も言わない。でもごめんね、ひとつだけ言わなくちゃいけないことがある。あるんだけど言えない。あのね、あのね、私は自分に電池があることを知ってる。いつかその電池が切れてしまうことを知ってる。私はあなたが愛おしくて、その電池を物凄いスピードで消費してる。私は自分の電池が切れたらどうなるか知ってる。私はあなたに隠しているこの思いを全部ぶちまけてしまう。そうなったら私はもうあなたと一緒にいられない。だって私はたくさんあなたを傷つける。そんなことはしたくない。だからそうなる前に私は消えなくちゃならない。どちらにせよあなたはきっと私を嫌いになる。そしてあなたは私から離れていく。だったらあなたを傷つけることだけは避けたい。でもそんなこと言って、私はあなたに嫌われるのが怖い。ああ、ああ、こうして考え事ばかりして、どんどん電池は消費されていく。あっ…カモミール、良い香りだね、私、これを枕元に置いてこれを嗅いで寝ることにする。きっと寝ている間も頭が休まるかもしれないね。朝起きたらいつも頭痛がするの。ズッキーーンって。お医者さんに言われた。常に思考していて脳疲労を起こしてますって。あはは、一生ロキソニンが無いとやってけないよ。トイレットペーパーとかイソジンとかが店頭から消えても、ロキソニンは消えないでくれるからラッキー。私、運がいいよね。ねえ、あなたはどうして私と一緒にいられるの?ってずっと思ってる。あなたはたぶん人間で「心」や「感情」があるのにどうして私を虐げないの?もっと殴ったり蹴ったりしたっていいのに。私はそれでも嫌いにならないからさ、大丈夫だからさ、いいんだよ、そういうことして。そういうものじゃん。そうしてくれないと私、誰からも必要とされてない気がしちゃうでしょ。私は誰かから必要とされたいんだよ。できることならあなたから必要とされたいんだよ。例えば夜の営みの時とか、あなたが女の子を縛り上げるのが好きなら私は血が滲むまで縛り上げられたい。あなたが首を締めるのが好きなら窒息寸前まで私の首を絞められたいよ。別に私は縛られるのは好きじゃ無いし首絞められるのも好きじゃないんだけど、あなたのためなら何されたっていい。だってあなたは神様みたいな人なんでしょ。姿形は人みたいだけど、きっと本当は神様なんでしょ。私知ってるんだから。本当に運がいいよね、私。こんな人間のもとに神様があらわれるなんてさ。「小さい頃は神様がいて」ってユーミンも言ってたっけ。私まだ子供なのかな。そうそう、私ね、ちっちゃい頃よく変なこと考えてたんだって。お母さんが言ってた。私はいつだってすごく真面目なんだけどね、周りが笑うの。この世界は1つのストーリーで、私以外の地球上のすべての人たちはそのストーリーに則って演技をしてるの。だからみーんな、最後がどうなるか知ってる。神様はその監督かも。でもね、私だけがそのストーリーを知らないの。私は欠陥品なの。秩序を乱すの。仕方ないの。神様は私を助けに来てくれたのかな。それとも欠陥品の私を排除しに来てくれたのかな。怖いの。早く教えて欲しいの。あなたは神様なんでしょ?教えてよ。私、耐えられないよ。今私に優しくするってことは、ずっと優しくしてくれるってことなの?「安らぎ」「癒し」ねえ、私、今ね、怖いくらい幸せなんだよ。ピーク?ピークってやつなの?またドーンって落ちるの?ああ、ああ、私もうあなたのせいで「幸せ」に慣れてきちゃってるのに。もし、もしね、私がこのままあなたと何年も暮らすって夢みたいなストーリーなら私あなたと手を繋いで抱き合って2人同時に命尽きて腐って土に還りたい。それが叶わないなら幸せなうちに死にたい。でも、きっとそんなことは無理なんだよね。そもそも同時に2人が老衰で命尽きるなんて映画の話でしか無いし、あなたは"ちゃんと"した人だから、私が死んでも後を追ってなんかくれないでしょ?もしあなたが先に死んだら私はすぐにでも同じ場所で後を追うけど。
…ああそっか。わかっちゃった。
私、1人になりたくないだけなんだ。あなたのこと大事になんか思ってないんだ。あーあ、最悪。結局私、自分のことしか考えてないんだ。きっともう少しで私の電池が切れちゃう。ほら、考えすぎてちょっと頭がくらくらしてきた。眠いよ…ああ…だめだ…しかも頭痛い。ロキソニン飲まなきゃ。ってああ、切らしてるんだった。あ、いいよいいよ別に買いにいかなくたって。こんなに暑い中マスクして出たら今度はあなたが具合悪くなっちゃう。しかも最近は近所の薬局、薬剤師さんいないんだよ。いーのいーの、これくらい少し寝てりゃ治るから。ありがとね。ふふ、申し訳なくて死にたくなるね、せっかく誕生日だからって私のためにいろいろ用意してくれたのに、肝心の私があなたのために喜ぶ体力もないんだから。あなたは私の喜ぶ顔が見たくてやってるんだろうに、本当にごめんね。あれ、おかしいなぁ、涙が出てきた。あぁ、あぁ、そうだ、私「残り1%」だ。前にも経験したことあるからわかるんだ。
もう少しで電池切れかぁ。お願いだから動いてよ、体。あなたに喜ぶ顔見せてあげないと。あぁどうしよう。あなたに隠していたものが全部溢れてしまう。化けの皮が剥がれてしまう。あっ…あっ…私が化けていたんだ、私は人間の姿に化けた悪魔だったんだ。そうだ、私は悪役なんだ。そして君は神様。もしかしたら監督。
どうしよう、私人間じゃなくなる!君をもっと傷つけてしまう。私は君を愛しているのに。君のことが大好きなのに。君と離れたくないのに。君と…君と…6畳半の狭いアパートで2人で一生懸命働いてやりくりしながらお金を貯めて、いつか2人だけで結婚式を挙げて、愛を誓って、少しだけ広い部屋に引っ越して子供ができて、子育てをしてその子に2人で惜しみない愛情を注いで、そのうちその子は無邪気に笑う天使みたいな子になって……………………………
………悪魔と神様の子は天使になれない。
君がどんなに白くても私と混ざってしまったらそれは白じゃなくなってしまう。
私は、私が嫌いだよ。私みたいな悪い化け物の遺伝子を増やしちゃいけないよ。だってまたストーリーがわからない欠陥人間が増えてしまう。そして、誰かを不幸にしたり誰かを困惑させたりしてしまう。世界が綺麗に回らなくなっちゃう。そして何よりね、可哀想だよ、私みたいな欠陥品の血を受け継いでしまったらその子が苦しんで…
………痛い。
(アノネ、シロモクロモナインダヨ、ニンゲンハミンナモウゼンインマザッテル、ぐれーナンダヨ。キミモぐれー、オレモぐれー、ソコカラウマレルコドモモぐれー。モシカシタラトツゼンヘンイデシロニナルカモシレナイシ、クロニナルカモシレナイ、キミハキミノシアワセダケカンガエテイイ)
あぁ、君が何かを言っている。赤く腫れた頬が熱くて、私は嬉しい。君の手が熱かったのかなあ。なあんだあ、そっかあ、君は私を排除しに来てくれたんだね。私、やっと楽になれるんだ。さあ、早く、今すぐに、
「ねえ、この手で私を殺して。」
〔my battery : empty〕
KILL ME WITH YOUR HANDS ぽぽ @inudesu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ぱっつん黒髪ロングの秘密/ぽぽ
★9 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます