あなたに心を奪われたあの日から

Shiiga6

あなたとの出逢い

毎日、同じ繰り返しの日々に私は嫌気が差していた。

そんなある日の放課後、テストが近くなり、「家に帰っても勉強しないだろう」と思い私は教室で勉強することに決めた。

放課後の教室には誰も残っていなく静寂の空間となっていた。それが私には落ち着く、それに比べて朝は賑やかな声が教室中に響き騒がしく私は余り好きではない。

勉強をやっていたら少し眠くなり、時間を見ると六時半になっていた「まだ、帰らなくてもいいや」と思い机に顔を伏せて「疲れた〜」と呟いた。


『まだ残っていたのか』とドアの方から声が聞こえたので振り返って見るとそこには私の苦手の先生がいた。「はぃ」と渋々、私は答えてからまた顔を机に伏せた。


すると、先生は私の隣に座り『何か悩んでいるのか?』と言った。

私は下に伏せた顔が驚きの余り上がってしまい先生と目が合った。先生の目はつり目で無表情が多いから怖い印象だった。それに口数が少ないから余計に近寄りがたい感じがして私は苦手だ。それなのに多くの生徒からは人気があり慕われているのだ。


そんな口数が少ない先生から疑問系で問いかけてくるとは思わなかった。ましてや、先生の事だから『早く帰れ』とか言い長話を避けるのかと思ったら予想外の言葉が来たので驚きが隠せないまま、目を逸らす事も出来ず、停止状態になっていた。


少し経ってから私は何か言わなければと思い「自分を変えるにはどうしたらいいですか?」自分でも分からず変な質問を口に出してしまった。

先生は驚く様子もなく『自分が行動しなければ道は切り開けないぞ!自分の殻を破れ!』と言って笑った。初めて見た先生の笑顔はあどけない感じで普段とは違く胸がドキッとした。その瞬間に私はもっと先生の事を知りたいという気持ちが強く芽生えたのだ。私は教えてはくれないと分かりつつも、知りたい思う気持ちが勝ってしまい「先生の人生経験を教えて下さい(笑)」と聞いた。

すると、先生は『教えても良いがつまらないぞ!』と言いまた笑顔を見せ、自分の失敗した事や成功した事、嬉しかった事や辛かった事を色々と語ってくれた。

話を聞いているうちに自分の頬が緩んでいる事に私は気付いた。先生が人気の理由がなんとなく分かった気がする。最初は怖い印象があったけど関わって話してみると話しやすく相手の話を真剣に聞いてくれるからみんなに好かれるのだろう。なんと言ってもあの、あどけない笑顔は可愛いからか。(笑)

そんな事を思いつつ先生の話に耳を傾け微笑みながら聞いていた。

先生が『そろそろ帰るか!また、明日な』と言った。

私は先生の顔を見て今度は元気よく「はい、今日はありがとうございました!また明日!」と笑って返した。

下駄箱に行き靴を履いて学校を出たらモノクロだった周りが一気に眩しく輝き出したのだ。今まで私が見ていたモノクロの周りが美しく色付けられて行く。「明日が待ち遠しいなぁ〜」と思いながら家に帰って行った。


この日から私の心はあなたに奪われました。

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