第4話

 詞の墓前に来ていた。肌を焼くような暑さで汗が溢れてくる。

 あの練習試合以降、監督の目に止まったのか控えのメンバーに入ることになった。運動量を買われての事だろう。

 指示された相手選手に何度やられても食らいつく。またはフォローに走り、クロスが上がりそうならゴール前に駆け込む。とにかく走り続けてきた。

 明日はスタメンで起用される。詞にその報告を聞かせてやりたかった。


ザー…ザー…ザー…


 突然、雨が振りだしてきた。もともと汗で濡れていたから良いか、と俺はその場に留まった。

 数分立つと雨は上がった。どうやら天気雨だったらしい。空を見上げると帰りの方向に虹が掛かっているのが見えた。

「また来るよ。」

 俺は墓に背を向けて歩き出した。

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空に走る あきかん @Gomibako

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