第3話、俺は・・・

この部屋とは別に、俺はアパートを借りている。

職業柄、気持ちの切り替えが必要なのだ。


普段はシャワーを浴びて着替え、アパートに帰るのだが今日は無理そうだ。


「なんでこうなったのか、説明してくれるかな?

王族として承認されるためにEX討伐が必要なのは理解している。

それ以外のことを教えてくれ」


「はい。

全ては私がEXを侮っていた事に起因いたします」


「姫様!それは違います!

くだらない挑発に乗って、3人でのEX討伐を提案したのは私です」


「ああ、そういうのは要らないから、事実だけ頼むよ」


リザードマンを数体倒したところで、EXの奇襲を受けたこと。

結界師兼治療役の一人が殺されたところで、ヘルパーへの自動要請がかかる。

ナシカが倒れたところへ俺が駆け付けた。

そして、俺が妙な仏心を出して、EX討伐を手助けしてしまったところから事態が転がる。


「王族承認儀式中に得たEXの魔石は、王位継承者の証です。

歴代の王の中でも前例は1度しかなく、普通は継承権どおりに王が継承されています」


「ほう、フェスタが次期王様って訳か、よかったじゃねえか」


「よくありません!

私は・・・王になどなりたくありません。

王に相応しいのはロッド兄さま・・・」


「ブラコンか?」

俺は唇の動きでナシカに問いかけ、ナシカは肯定した。


「この魔石による王位継承には、いくつかの付帯条項があります」


ナシカが先を続けた。


「どうせ、助力した相手を伴侶にしろとかいうんだろ。

却下だ」


「ヘルパー様には王族の理など影響しませんからね。

そうおっしゃるだろうとは思っていました」


「よし、じゃあ寝るから・・・」


「まだ、続きがあります」


「眠たい・・・」


「90日の間に、資格者の中で赤い魔石を手にした者が現れた場合、魔石の大きさでどちらが選ばれたのか判定されます。

また、その間に、対象者が死亡した場合は無効となります」


「えっと・・・確認するけど、資格者って?」


「王位継承権のない貴族や、公益職に就く者などです。犯罪歴がなく、正しい心を持った者と解釈されています。

ヘルパー様など、最たる候補者といえます」


「・・・そう・・・

対象者の死亡って、フェスタと・・・」


「サブロー様が亡くなられた場合は、伴侶を選びなおすことになりますが、今回の場合、フェスタ様がここに居られなくなる事の方が重大ですね」


「それって、辞退できないの?」


「女神さまの神託と同等とお考え下さい」



「とりあえず、眠らせて・・・って、なんで三人とも脱ぎだすの?」


「女の裸はお嫌いですか?

そんなはずありませんよね。

せりカの写真集をお持ちなんですから」


やばい、核心を突かれた・・・

待てよ・・・あの写真集は、この部屋ではなく、アパートにあるはず・・・


焦るな、動揺を見せるな!


「なんでそれを・・・」


「ご安心ください。

アパートから必要そうなものは運び出してあります。

監視が張り付いており、すべては無理でしたが、趣味・趣向がバレそうなものはそちらの段ボールに入っております。

私のような胸のない女でも需要があると分かり安心いたしました」


「・・・そ、そう、ありがと・・・」


「それから、行きつけのメイドカフェとか、飲食店。風俗店などは、すべて敵対者の手が伸びているとお考え下さい」


「・・・それって、近衛さんの共有情報?」


「当然です」


「最後にもう一つ・・・

セリカ・・・っさんは、どっちが本職なの?」


「ウフッ、ご主人様の意のままに」


半裸の乳房がプルンと揺れた。

まさかと思ったが、本人だった。

しかも、もうダンジョンの外に俺の居場所はない・・・ってことかよ。


「写真集ご使用の頻度からセリカを呼びましたが、まだ何人か近衛の本がございました。

追加も可能ですので、ご要望くださいませ」


「いえ、生セリカさんだけで十分です・・・添い寝は必要ありませんから・・・おやすみなさい」


「サブロー様は、私たちに不眠をお求めなのですね。わかりましたわ・・・」


「あっ・・・では、せめて何か着てください・・・」


疲れ切っていた。早く寝たい・・・もう、どうでもいい・・・


ムニュとか感じる間もなく寝た。



ダンジョンヘルパーは2交代だ。

24時間勤務で、24時間の休み。それだけの体力も付与されている。

寝るときは15時間から20時間くらい寝る。

朝5時、目覚めは爽快だった。

右腕のムニュンはフェスタで、セリカさんはメイド姿でキッチンにいた。


ナシカは出かけているようだ。


「おはようございます、ご主人様」


「あっ、おはようございます」


「いま朝食をお持ちしますから」


全国のセリカさんファンよ。羨むがいい。

セリカさん手作りの味噌汁だ。だし巻き卵だ。煮物だぞ。


至福のひと時だった。


勤務中に戻った時にも、余計なことは言わずお茶だけ煎れてくれたりする。

ナシカもメイドとして完ぺきだった。

フェスタはそれなりだったが、相変わらずプルルンだった。


初日のように、目立って俺狙いの襲撃はなかったし、パーティーの多人数化で要救助が激増することはなかったが、それでも部屋に帰る時間はほとんどなくなった。

このような状況が20日も続くと、ヘルパーにも余裕がなくなり、ついに負傷者が発生する。

俺だけは、充実した毎日を送っていたのだが・・・


国は事態を重く見てダンジョンの入場制限に踏み切った。

だが、これが悪手で逆に情報が広まってしまった。

つまり、誰でも魔石を入手すれば、王になるチャンスがあると・・・


人々は王城とダンジョンに押し掛けた。自分たちにもチャンスを与えろと。


その日、俺は勤務だった。

緊迫した世間の情報など知りもせず、一日中飛び回っていたのだ。




「この事態を収拾できる方法は・・・ほかにありませんよね」


「ですが姫様、せめてサブロー様にご相談されては・・・」


「いえ、決心が鈍るだけでしょう。

サブローにもどうにもできません」


「楽しい20日間でございましたね」


「ええ、寝ているうちに我らに抱かれたと伝えられぬのは残念ですが、仕方ありませんね」


「では、まいりましょうか」



『サブロー、緊急事態だ。

リミッターを解除するから至急戻れ』


『了解。

ちょうどC・C・Dの救助が終わったところだから強制転移で一緒に戻る』



事務所へ戻ると婆さんが三人の状況を告げてきた。


「嬢ちゃん達3人が城のバルコニーから飛び降りた。」


「へっ、なんで?」


「姫様が死ねば、王位継承問題は白紙に戻る。

そう訴えて自殺を選んだんじゃ。

急げ、もう大分時が経ってしまった」


転移で現場へ行くと、大勢が遺体を囲んでいた。


「どけ!」


「サブロー!なんで部屋から出した」


「うるさい!邪魔するな!」


3人の遺体を抱いて事務所へ転移する。


「蘇生器の空きは2つじゃ。

誰を残すか決めるんじゃ」


「セリカさんは俺が助けるから、二人を頼む」


「分かった」


王女、貧乳、関係ない。

セリカさんに何百回お世話になったと思ってるんだ。

・・・写真集にだけど・・・


セリカさんを背負い、地下298階層へ一気に転移する。


そこは魔王の居室だ。


「ぐへへ、よくぞここまで・・・」


「うるさい!」


魔王も手下も一撃で切り捨てる。

ヘルパーは全員ここをクリアしているのだ。

玉座の後ろに隠された階段を駆け下りる。


「サブローではないか、久しいな」


「女神ちゃん、言ったよな。

最愛の者を失った時、もう一度ここへ来いと」


「ああ、だが代償はダンジョンでの終身雇用じゃぞ」


「かまわない。セリカさんを助けてくれ」


「ふむ・・・じゃが、その女は受精しておるぞ。

サブローだけの終身雇用ではむつかしいのう・・・」


「へっ、受精って?」


「ぬしの子に決まっておろうが!

乙女3名を手にかけながら・・・いや待て・・・ぬしは20日もの間、寝ている隙に犯られたのか・・・」


「えっ?3人?20日・・・ヤラレタ?乙女?」


「ああ、3人とも生娘じゃった、間違いなくぬしの子供じゃ」


「えっ、セリカさん達の初めて・・・俺、寝てたの・・・」


「仕方ないのう、おトメさんも限界じゃから代替わりが必要だし、まあ女3人とも終身雇用じゃな」


「わかんないけど、セリカさんが助かるならそれでいい・・・」



こうして俺は3人の命と引き換えに、終身ヘルパーとしてダンジョンに縛られることとなった。

フェスタの命を懸けた訴えは国民の心に届き、暴動もなく平常に戻っている。

90日後の裁定で俺は上位の魔石を持つものとして王に選ばれたが、運営はロッドに一任してある。

セリカさんのお腹はまだ目立っていないが、エッチはお預け状態だ。

その分、二人へのご奉仕が続いている。


「サブロー、仕事だよ!」ナシカからの指示が入る。

俺は2交代制から外れ、常時勤務となった。

勤務時間は18時間・・・誰か・・・助けて・・・


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダンジョンヘルパー モモん @momongakorokoro3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ