& prologue

 景色。


「ここは」


 また、来れた。


 あのとき以来の。


 景色が、広がっている。


 そして。


 目の前に。


「ごめんなさい。あのとき、応えられなくて。逃げてしまって。俺には、ここしかなかったから」


「ごめんなさい。あのとき、追いかけて。訊いてしまって。わたしには、ここしかなかったから」



 手を伸ばした。


 そこで、目が覚める。


「なんで」


 いつも、こうやって。消えていく。見た夢が忘れられるように、景色が、顔が、記憶が、消えていく。


「だめだ。これじゃ」


 あのときと変わらない。


 部屋を飛び出した。


 走る。


 二人が会った場所へ。現実で。ここで。


 研究室。


「ごめんなさい。今度は、もう、訊かない。なにも」


「俺も、今度は。応える。ぜんぶ」


「ようやく、会えた」


「夢と現実の狭間に、幻想に、俺は行ったことがある。あなたも、そうだったんですね」


 そして、また、出会う。


 幻想が、現実になる。

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幻想 春嵐 @aiot3110

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