夢見る地獄
コオロギ
夢見る地獄
私が最近毎晩のように見ているのは、こんな夢です。
場所はいつもばらばらで、どこかの通りの真ん中だったり、病院と思しき建物の階段だったり、ショッピングモールの立体駐車場だったり、船の甲板の上だったこともあります。そこで私はいつも、尋常でない眠気に襲われているのです。
そのまま眠ってしまえればいいのですが、私は絶対に眠ってはならず、目的があるのかないのかも分からないまま、頭をぐらぐらと左右に揺らしながら、よた、よた、と足を動かし続けているのです……。
……幼いころ、こんな夢を見たのを覚えています。
そこは小さな公園で、滑り台も砂場もなく、ブランコが一つあるだけでした。私は何の疑いも躊躇もなくそのブランコに乗り込み、勢いよく漕ぎ出していく。ブランコはあっという間に繋いだ鎖の限界の高さまで到達し、それでも私は執拗にブランコを漕ぐのです。すると、いつの間にか、ブランコは達したはずの限界を超えて、ありえない高さ、上空という高さまで舞い上がっていて、その時にはもう、私は操縦を放棄して、ただ鎖にしがみついているしかできなくなっているのです。
ブランコは巨大な振り子となって、ぶうんぶうんと高度を上げていきます。私の手は汗ばんで、やがて、一番高いところでその手は滑り、私は、頭から、速度を上げながら、地面に向かって真っ逆さまに落ちていきました。
ぶつかる、そう覚悟した地面すれすれのところではっと目を覚まし、私の体はベッドにふわりと抱き留められるのです。
……あの時。
私を受け止めたのは、本当に、本当のベッドだったのだろうかと、私は近ごろ考えるのです。あれは夢だった、そして、その夢の中で私は眠り、そのまた夢の中でまた、私は夢を見ている……。
そんなことを考えながら私は、今日もまた、どことも知れない場所を、意味も分からないままに、ただ、よた、よた、と覚束ない足取りで通り過ぎていくのです。
夢見る地獄 コオロギ @softinsect
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます