夏の蝉

なつぼん

第1話__なんとなく

 私は、校舎を出て1人で校門へ向かっていた。今日はきっと、この校舎にいる誰よりも早く外へ出るはず。無駄に他クラスによったり挨拶なんかはしないで4階から昇降口まで降りた。なんとなくそうしたい気分だった。意味の無いちょっとした優越感に浸りながら、少し早めに歩く。なんとなく、世界より少し早めに動いている気がして、たった1人でも置いてけぼりになるよりよっぽどいいとかあまり関係ないことを考えてみた。


 7時間目の後HRが終わったら、友達とゆっくり今日の出来事をバスで話そうと、いつものように当たり前に話題を思い出していたのに、どうやらいつも一緒に帰る友達は課外があるらしい。HR前に思い出した。去年同じクラスだった時もベタベタする程お互いを求めてはいなかったけれど、それでも入部当時から話すようになった彼女は数少ない出会ってずっと仲の良い友達だ。

 クラスが離れてからもなんとなく彼女の所へ行って見てだる絡みをして。おしとやかで元々自分から予定を言わないタイプだから、私が課外の名簿を見て確認していた。今までとなんら変わりはないと思っていたのに、そんな些細なことも忘れてしまうなんて。

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夏の蝉 なつぼん @natsubon

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