とある科学者の自信作

なのの

ある科学者から見えた世界

 ある時、この世界でホムンクルスが作られた。



 作成者である科学者はこのホムンクルスを世界中に自慢したかったが、所属の上のほうから口外禁止との命令が出てしまった。



 確かにこんなものを世に広めてしまえば、我先にと欲がる民衆によって大混乱になるのも理解できる。



 暫くして解った事だが、そのホムンクルスは知能を持っていた。



「僕を作ってくれてありがとう、できたら貴方の願いを叶えてあげたい」



 何が出来るのかがわからなかったので詳しく話を聞いてみた。



 ホムンクルスには人を天にも昇るような気持ちにさせれる力があるらしい。



 それならばと、私はホムンクルスにお願いをした。



「私いる国の人々は国の圧政に苦しんでる。せめて幸福を与えてやってほしい」



 ホムンクルスは了承をすると暫くの間消えていたが数分で戻って来た。



 胸をなでおろしながら他に出来る事を聞くと、食事に困らなくなる効果があるという。



 咳払いをするだけで、食事がタダで手に入るというのだから、広めないわけがない。



 これでこの国の食糧問題は無くなったかもしれない。



 他にはないかと聞いたら、あとは大したことじゃないという。



 低体温の人の為に体温をあげる事ができる、と。



 最初の二つに比べると確かに大したことではないが基礎体温はそこそこ高い方が病気にはかかりにくくなるのだから、きっと喜ぶ人は多いだろうと思った。



 さらにホムンクルスは思い出したように言った。



「仕事をしろと強制されなくなるよ」



 どういう意味かは分からないが、無理に仕事をしなくても食事ができるならそれに越したことはない。



 私にはこの素晴らしいホムンクルスが世に出回らないのが非常に悔しかった。



 せめてもっと大勢の人々にこの成果を見てもらいたい。



 どうすれば良いかとホムンクルスに相談すると、複製体を最低でも18体作ってほしいと言った。



 それは非常に困難な事だったが、私にはそれを乗り越えるだけのモチベーションがあった。



 どうにかやり遂げた時に、彼らは私に名前を付けてくれと言われたのだが決められなくて上司に掛け合った。



 その話は巡り巡って国際機関にまで話がたどり着いてしまった。



 そこで決められた名前は安直な物だったが、ホムンクルスが喜ぶので良しとした。






 その名も『19体の小人(COVID-19)』





 世界中に公表された、これこそが私の本当に叶えたい事だった。



 私も天に昇る気持ちになる時が来たようだ。



─────────────────────



 第二派真っ只中ですので密を避け、人と人との間隔を開けましょう。



 それを行間で表現するのは難しい。

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とある科学者の自信作 なのの @nanananonanono

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