完全に予測不能なブッ飛んだ展開に、君は追いて来れるか?

読み始めてまず思うのは「ある時代」ってどの時代だ? という基本的な疑問である。次に「怖い話」って、どこが? と首を傾げることになる。「ちょっと未来の」って、これって「ちょっと」なの? とか、、。これはすべて作者の仕掛けたワナで、読者の予想や期待を完全に裏切る形で物語りは進行する。通常の小説と思って読むと「どっ、どこに辿り着いた?」と読了後に慌てふためくことになる。しかし語り口はユーモラスかつリズミカルで、しかもその行間に作者一流のニヒリズムが漂い、甘さと塩っぱさと苦味の配分が絶妙な、他では決して味わえない不思議な魅力の文体となっています。軽く読めるコミカルな雰囲気ながらも、不意に、作者の意外な程の力量に驚かされる、そんな作品です。子どもが読んでも楽しいし、大人が読んでも味わい深い、好短編です。