武蔵野うどん屋の祖父。商社マンの父。子供の頃の主人公が逃げ場に選んだのは、祖父だった。だから休日になると祖父のところへ行く。電車を乗り継いで、一時間もかけて。――風をきくんだ。耳を澄まして、集中して。武蔵野の自然の中で祖父は教えてくれた。父のこと、祖父のこと、そして成長するということ。そしてラストの主人公の決意が、胸を熱くする。狭山丘陵の湖に行って、風をきいてみたい。そう思わせてくれる、素敵な作品だった。