第31話 黒装束
窓の外には、逃げる人達と、魔法を放つ黒装束の人達。
黒装束の人数は、およそ二十人。放っている魔法は、炎の魔法だ。絶対に敵キャラだ。ここまではなんの問題もない。問題なのは、
【魂は普通の人間なのに、魔法が・・・・・・】
あぁ、俺も同じ考えだ。この世界の設定では、魔法は弱いはずだ、だが、奴らが使っている魔法は、明らかに威力が桁違いだ。
【君に説明し忘れてたけどさ、僕が力を行使するとね、君は少しだけクラっとするからね】
「それ今言うこと!? 追加で、君って呼ぶのやめてくれ。それと、奴らの魔法の謎は?」
説明しよう。窓から飛び降りた俺達は、現在進行形で、避難活動を手伝っている。
諸君、誤解するなよ。別に黒装束が怖いから逃げている訳ではないからな!
【ねぇ君、じゃなかった。シュウ、僕、奴らと戦っていい?】
もちろん。むしろ倒してくれ。
【シュウ、ちょっと隠れてて】
「気を付けろよ、ジャック」
【ははっ。人間に心配されるなんてね】
ジャックはそう言い残し、奴らのいる方へ走っていく。その数秒後、一瞬だけ目眩がした。
ドッゴーーーン!!!
先程までの爆発と違い、大地を大きく震わす威力の爆発だった。
【ただいま】
いつの間にか、ニコニコとしたジャックが横にいた。
「今のは・・・・・・ジャックが?」
【そうだよ。黒装束五人を吹き飛ばしてきた】
「おい! 死んでねぇか、それ!?」
ジャックの力は危険だと心に刻む。とりあえず、この街の皆んなを避難させないと戦えない。
【僕が爆発の衝撃を防いでるから、そのうちに避難させてね】
「任せろ」
かっこつけてピースをしたが、この状況でかっこつけるのはジャックの方な気がしてきた。それよりも避難させなきゃ。
小さい子供達を連れて避難する神父さんがいた。
「神父さん! 俺の背中に乗ってくれ!」
「ワシよりもこの子達を」
「うるせぇよ! 神父さんが遅せぇから、子供達も本気で走れねぇんだよ! 早く乗れ」
神父さんは思いのほか軽かった(嘘です)。子供達も連れて走るが、後方から聞こえる爆発音が心臓を震わせる。
街から離れた場所へ行くと、たくさんの人がいた。近づくと、一人の女性が歩み寄ってきた。
「あぁ、坊や。心配したんだよ」
あっ、お母さんなのね。神父さんが連れてたから、孤児かと思ったわ。
「神父さんと、お兄ちゃんが助けてくれたんだ」
「なんと感謝すれば」
「感謝なら後でいいぜ。これから奴らをぶっ飛ばしてくるからよ」
正直に言うと、子供達と走ってただけで、助けたようなシーンは無かった。
街に戻って、皆んなと合流しようとしている時だった、
『メティア様を感知しました。主のご命令通り、神殺しを発動します』
前にも聞いた事がある、無機質な女性の声が聞こえた。
それよりも、神殺し!? メティアを狙っているのか?
俺が、ヲタク脳をフル回転させていると、
「危ねぇ!」
ゼクサスが目の前に現れた。その直後、鮮血が宙を舞った。倒れるゼクサスの背後に、黒装束が一人笑っている。
「てめぇぇぇぇ!!」
俺は、これまでに無い速さで、黒装束との距離を詰める。
「遅いですねぇ」
何だ? 一瞬だけ、こいつの体がブレた。
俺の刃が、黒装束の体と重なった瞬間、嫌な予感が的中した。
「背中が、がら空きですねぇ」
くそ! 残像系のスキルか。まずい、殺される!
その時、俺の背中スレスレを、炎の塊が通り過ぎた。
「おい、俺は・・・まだ・・・死んでねぇぞ」
炎を放ったのはゼクサスだった。ゼクサスの足元には、大量の血が流れていた。
「その出血で動けるとは、《最後の灯火》流石ですねぇ」
「シュウ! そいつの剣で斬られると回復魔法が使えなくなるぞ」
・・・・・・マジかよ。
「他人の心配してる余裕があるのかねぇ」
黒装束は、剣を構え直す。
この状況では、勝てる可能性は低い。最強戦力であるゼクサスは死にかけているし、俺は弱い。ゼクサスだけでも逃がさないと。
【シュウは弱くないよ】
俺の目の前にジャックが現れた。
「どうやって来た?」
【シュウが死を感じたから、強制召喚されたんだ〜】
つい、安堵の息が零れる。
「私は一時撤退しますねぇ。それに、悪魔にもゼクサスの傷は癒えませんからねぇ」
そう言って、黒装束が逃げようとした時だった。
【殺すよ】
ジャックが放った言葉は、その場にいる全員を動けなくするものだった。俺の思考回路が恐怖から解き放たれた時には、黒装束の男は灰と化していた。
ジャックは、ゼクサスに近づいて、こう言った。
【ゼクサス君の呪いは、僕が引き受けるよ】
ZEROstart : 俺はヒロイン獲得スキルで異世界最強を目指します! Rafu 『絵師』 @zerokenya
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