第30話 女神
ベットの衝撃で、大事な事を思い出す。
【あっ、忘れてたね】
金髪美女を俺のベットの下に隠してたんだった。
俺はベット下にいる金髪美女に話かける。
「大丈夫ですか? 助けに来ました」
【ここに隠したの僕達だよねぇ〜】
俺はジャックの事を無視して、ベットの下で頭を押さえてキョトンとする金髪美女をベットの下から救出した。
「ありがとうございます。人間界に来るつもりはなかったのですが」
「そうですか、それはまた大変な・・・・・・はぁ!?」
いやいやいや。えっ、人間界? 天使キャラなのか?
【天使の羽は無いみたいだけど・・・・・・魔力量が多すぎるよ】
金髪美女の言葉に混乱する俺と、魔力量に驚くジャック。
皆んなが起きないように気を使いながら、俺とジャックは状況を整理していると、何を思ったのか、金髪美女は姿勢を正し、その場に正座する。
俺とジャックも、それに習って姿勢を正す。
「名乗り忘れましたね。私の名前はメティア。第二十二位、破壊の女神。」
俺は初めてメティアの目を見た。
赤く美しいその瞳は、俺をその輝きの中に閉じ込めていた。
「この美しい瞳が美しいと思えるのですね」
考えていた事を当てられて驚いてしまう。
【この子、メティアは君の思考を読めるみたいだね】
「悪魔さんの思考も読めてますよ」
最悪だと言う、ジャックの気持ちが伝わってくる。
確かに、女の人に思考を読まれたくない。何故なら、美しいなどの思考を読まれるのは恥ずかしいからだ。
「すみません。勝手に読めてしまうのです」
メティアは頭を下げる。
可愛いので許すとしよう。なぁ、ジャック。
【確かに綺麗だからね】
よくよく考えたら俺とジャックの思考回路は最低かもしれない。
「そこまで言われると、その、恥ずかしいです」
【別に言ってはいないけどね】
その通り。言ってはいないな。
「話を戻すのですが、私の瞳は本当に美しいと?」
目を細めるメティアに、俺は、そうです。と答えた。
「そうですか。私の瞳は、零の瞳と呼ばれるものです。零の瞳は、あらゆるモノを破壊し、無にする魔眼です。時には星を、世界を、何億という人々の命を一瞬で奪える力です。それでも美しいと思いますか?」
強そうでかっこいい設定だなと思う。
そのまま言ってもセリフとしてはイマイチだろう。
「見た目と本質は全くの別物だ。俺が美しいと言ったのは見た目の話だ」
「ありがとうございます。本質が恐ろしいのは変わらないのですね」
その言葉を否定しようとするが、ジャックが遮る。
【零の瞳は魔眼と同じだと思ってもいいのかな?】
「はい」
魔眼? 魔法陣が書かれている目の事か。
【その通りだよ。だけど・・・・・・】
なるほど・・・・・・。
「あの、しっかりと思考して頂けると有難いのですが」
メティアは、俺とジャックが何に気が付いたのか知りたいようだ。
【しっかりと思考しない感情は読めないみたいだね】
「はい。その通りです。あっ、シュウさんの分かりやすいように例えると、ノリやその場の空気といったものが読めないのです」
なるほど、そう来たか。じゃあ、メティアの目に魔法陣が書いてないって空気を思考するのは駄目みたいだな。気を付けておこう。
【こらぁぁぁぁぁぁ!!!】
どうした? 何でそんなに怒って・・・・・・あぁ! 思考しちゃってたのか!
「私の目に、瞳に魔法陣が無いと?」
「俺達にはそう見えるぞ」
その言葉に嘘が無いと気付くと、メティアは驚きを露わにする。
【鏡見せれば?】
俺は、枕付近にある引き出しから手鏡を取る。それを彼女へ渡す。
「零の瞳が・・・・・・消えた」
魔眼が消えた事を悲しむと思っていたが、少し嬉しそうな様子だ。
「その通りです! 嬉しいのです!」
その顔で近ずくな。心臓が爆発するところだった。
興奮状態のメティアに対して、ジャックは冷静に何かを考えている。
【ねぇ君、スキルをもう一度教えてくれないかな?】
「えっと、ヒロイン獲得と・・・・・・零」
人間と神と悪魔が、静かに見つめあっている、不思議な時間だった。
五分くらい続いた沈黙を破ったのは、メティアだった。
「私のスキルを返して下さい。呪われたスキルですが、その力がないと神界に帰れません」
「俺が盗んだ前提で話すのやめてくれ」
何を思ったのか、ジャックが見つめてくる。それと同時に、メティアも近ずいてくる。
【どうやって盗んだの!?】
「早く返して下さい!」
【僕もスキル盗みたい!】
「帰れないじゃないですか!」
ダメだこいつら、人の話を聞かないタイプの生き物だ。黙らせてから状況整理でもしよう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「すみませんでした」
前言撤回しよう。人の話を聞かないのではなく、必死になると話を聞かない。
どちらにせよ、タチが悪いな。
「それで、女神さんよ。何で《魔女》って呼ばれてんの?」
【第二十二位、破壊の女神。それも詳しくね】
今度は、俺とジャックでメティアを問い詰める。夢中で距離を縮めたことにより、メティアに顔を近ずけてしまった。寿命がもったいない。
「あの、恥ずかしいこと考えないで下さい」
「うるせぇよ! それよりも、早く質問に答えろよ」
メティアは、すっごい目で睨みつけてくる。可愛・・・・・・とりあえず許そう。
「・・・・・・分かりました。まず最初に、魔女と呼ばれる理由についてですが、分かりません」
分からないって、誰か殺したのか? まぁいいや、続きを聞くとしよう。
「この世界では誰も殺してません。さて、次の回答です。破壊の女神とは、他の神々が勝手につけたあだ名です」
メティアは、説明完了! みたいな顔をしている。
俺達が聞きたいのは、第二十二位の方なんだが。
「えっ。そうなんですか! すみませんでした」
【謝るのはいいからさ、早く教えてくれないかなぁ〜】
ジャックよ、そこまで急かさなくても。
月の光が射し込むこの部屋で、メティアの赤い瞳が淡い光りを放つ。
空気が少し重くなった。空気中の魔力濃度が高くなっていく。
「神位、第二十二位、メティア。百位まである神々の階級、それが神位です」
つまり、メティアはめっちゃ偉い神様ということになる。二十二ってエグいやん。
【一位の神が一番偉いの?】
「それは違います。一番強く、一番偉い神様は、最高神様だけです」
最高神は、順位の中にいないってことか。
【女神ちゃんって呼んで良いかな?】
ジャックの何気ない一言に、メティアは明らかに表情を変えた。偉い女神という印象が消え、そこには確かに、独りぼっちのメティアがいた。
「どのようにでも呼んで下さい」
メティアは、すぐに気配を元に戻した。
【じゃあ女神ちゃん、シュウのスキルの説明って出来たりする?】
「もちろんです。最初に、ヒロイン獲得について説明します。スキルの持ち主の元へ、様々な女性が集まります。その女性達は、問題が発生し、スキルの持ち主と行動を一緒にする事になります」
ん? ちょっと待てよ。その話が本当なら、メティアもスキルの被害者説が浮上しないか?
【僕も同じ考えだよ】
恐る恐る、メティアへ視線を戻す。
やばい、めちゃくちゃ怖い顔してるような。
「あの〜、メティアさん?」
「・・・・・・・・・・・・殺す」
メティアはそう言うと、掌を俺達へ向ける。
三重の魔法陣を展開している。
「さよなら」
メティアが魔法を放つ前に、宿の外で大きな爆発がした。
たくさんの人達の叫び声が聞える。逃げ惑う人達の中に、一人で泣いている女の子を見つけた。
「ジャック! 行くぞ!」
俺は迷うこと無く、窓から外へ飛び出した。
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