第29話 スキル

二十九スキル



「逃げ場は無いよ、悪魔」


ハーツはジャックに短剣を向ける。


【ねぇ君、コイツらは殺してもいい奴かな?】


ダメに決まったんだろ! 仲間だよ!


ジャックは意思疎通をやめて、自らの口を開く。


「死にたくなければ武器を捨てて欲しいな〜」


おいぃぃぃぃ! もっと他に言う事があるだろ!


「皆んな落ち着いてくれ、この悪魔はジャックって名前で、俺と契約した悪魔なんだ」


俺が仲裁に入り、今までの経緯を説明した。


「という訳で、これからはジャックも一緒に旅をしまーす」


話が一段落ついた後、ヒナとローズが男部屋に入ってきた。


「シュウ! 何で勝手に居なくなったの!」


ヒナと目があった直後、ブチ切れられた。


「ほんとよね〜。私もヒナも心配したんだからね」


「それはごめん。今度からは気を付けるよ」


可愛い子に心配された事ないからすげぇ嬉しいわ。

可愛い子と言えば・・・・・・・・・。

ヒナの方をチラリと見ると、


「シュウ、なんか隠してる?」


俺は空気。俺は空気。俺は空気。俺は空気。

俺は、金髪美女の事を気付かせないように思考する。


【なるほどね。その銀髪の子は感情が分かるスキルか〜】


ジャックは俺にそう伝えると、ヒナの前に歩いていく。


「わあぁ、可愛い! ローズさん見て、この犬可愛いですよ」


「確かに可愛いけど狼だと思うわ」


ローズの言う通り狼です。犬ではありません。


「じゃあ狼さんですね。お名前はなんて言うのかなぁ?」



【あれ? ねぇ君、この子のスキルって人間にしか使えない感じ?】


え〜っと、そうみたい。


ヒナにこの狼は悪魔だって説明しようと思っていたら、


「ヒナ! そいつは可愛くないぞ、悪魔だ!」


おいーー! ゼクサス、悪魔に嫉妬していますどうするんだよ、しかも狼の姿だぞ! 人間が勝てる可愛さじゃねぇよ!


「悪魔でも可愛いよ。ゼクサスは悪魔ってだけで嫌いになっちゃうの?」


「まいりましたー!」


ヒナの言葉に、ゼクサスはジャックに一礼した。


【そう言えば君のスキルはなんだい?】


まだ発現してなねぇ。


【? もう発現してるみたいだけど】


何で分かるんだ? 本人にも分からないのに。


【ん〜、上手く説明できないけど、契約してるから分かるんだよ】


なるほど。信用はしないでおこう


「おい。な〜にボケっとしてんだよシュウ」


ゼクサスはそう言って俺の背中を叩く。


「ジャックが俺にスキルが発現したって言ってるんだよ」


「可愛いさんは、ジャックって言うのね」


ジャックをなでなでしながらヒナは目を輝かせている。可愛いさんって何だよ!?


ヒナよ、話を遮るな。と言いたいところだ。


ヒナはごめんなさいと頭を下げる。


「なぁ、ゼクサス。スキルを確認する方法ってあったけ?」


「はっはっはっ! お前もう忘れたのか!? ギルド証明書見ればすぐ分かるぞ」


「そこまで笑うことじゃねぇだろ!」


俺は、鞄の中からギルド証明書を取り出し、書いてある内容を確認する。



性別 ・ 男

クラス ・ 剣士

名前 ・ シュウ

スキル ・ ヒロイン獲得 零



えっと・・・・・・何だこれ?


「なになに? 見せてちょうだい」


「オイラも見たい〜」


ローズとハーツが一緒になって覗いてくる。


「ひろい、ん? オイラには理解不能だよ」


その後、全員で考えたがどんなスキルか分からなかった。

今のところ分かった事は、スキルの発動条件だけだ。


一つ目、スキルを理解する事。例えば、スキルが日を噴くだった場合、口から火を噴けると理解出来る。使い方を理解する事が出来れば、スキルを好きに発動出来る。


二つ目、感情が爆発した時。自我を失うほどの怒りに呑まれた時、攻撃・戦闘系のスキルの場合、勝手に発動したり、覚醒してより強いスキルに変化するらしい。


三つ目、命の危険が迫った時。転んで高い塔のてっぺんから落ちた時、どうにかしようとスキルが発動したりするらしい。



それにしても、俺のスキルが謎すぎる。零って何だよ!? ヒロイン獲得なら百歩譲ってまだ分かる。ヒロインをゲット出来るって事だろ。


【ねぇ君〜、ひろいんってなんだい?】


それはな、自分を好きになってくれるお姫様みたいなものだ。だいたい分かった?


【ちっとも理解できないね。明日は祭りの本番なんでしょう、早く寝なよ】


了解。


いつの間にか、俺とジャックの承知を表す言葉は共通して了解になっている。二人だけの合言葉みたいでかっこいい。


そう言えば悪魔って寝るのか?


【少なくとも僕は眠らないよ。守っててあげるから、安心して寝てていいよ】


おう、ありがとな。おやすみ。


ゴン!!


「痛い!」


俺のベットが揺れた直後、可愛らしい声が聞こえた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る