Color
@mirin1512
夏の日
「色というものは見る人によって見え方、感じ方が異なります」
「今回は“あなたの色”をキャンバスにのせてください」
梅雨も開けて本格的な暑さに包まれる中、まばらな朝の教室で机に向かう茜李の姿があった。
「おはよー茜李、何してるの?」
「あ、比奈おはよ。進路希望調査。今日の放課後までだから、部活あるし今のうちに書いちゃおうかなって」
進路希望調査。言われてみればそんなんあった気がする。連日テストに追われてそれどころではなかった。
「比奈は進路決めた?」
「うーん。まだ決まってない。とにかく進学はしたいなぁ。漠然としてるけど笑」
「みんなそんなもんだって笑」
茜李はそういうと単語帳を取り出した。
「今日3限に英単テストあるよ」
「えっ、まじか」
高校生は忙しい。
中学の頃は高校生に憧れた。可愛い制服を着てローファーを履き、電車通学、部活やバイトで生き生きしてる高校生達に。だから入試も頑張ったというのにいざ入ってみたら田舎の自称進学校ほど痛いものは無い。制服のスカートは膝下丈、靴下はくるぶしから10cm以上、バイトは禁止、スマホも禁止。あるのは中学より緩い部活と理解不能な授業と毎週木曜日の常用漢字テスト。田舎の地元校に進学したため自転車通学片道20分。毎日背負う、登山に行くかのような重いリュック。
それでも学校生活はそこそこに楽しんでいた。
高2ともなれば後輩もできて、クラスが文理で別れて、修学旅行が待っている。
そして、進路も決めなければならない。
私たちは理系だ。俗に言う進学クラスと言うやつだな。確かに進学希望だったからこのクラスにしたが、明確な進路がある訳でもない。
「茜李は進路どうするの」
「私は県内の専門で看護師目指す。小さいときお世話になった看護師さんが忘れられなくてさ、私もあの人みたいになりたいなって」
県内の専門といわれると数も限られる。
「そしたら俺の姉貴と会うかもな」
紙パックのジュースを手に真斗が加わった。
今日はいちごオレだ。
「俺は工大行って建築でもやろうかな」
(私は)
何がやりたい。 どんな人間になりたい。
今興味のあるものは。 学びたいことは。
(今の私にはないかなぁ)
みんな自分のなりたい色に染まり始めている。
中学までとは違う。それぞれの人生の岐路。
私はまだ自分の色を見つけられない。
Color @mirin1512
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Colorの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます