第6話 外の世界

光の眩しさに目が覚める。木々から漏れ出る朝の日射しに、はよ起きろと叱られているように感じる。

今思えば、朝日で目覚めたことはなかった。実家も、地元を離れて暮らしたあのアパートも朝日が差すことは無かったのだ。

バイクのエンジンのような音が腹から鳴った。そういえば、腹が減った。最近やたらと腹が減りやすい。

よっこいせと腰をあげて前を見ると、久しぶりに見たオニクの実。大きな木に大量に実っているではないか。1日に必要な分だけもぎ取って、俺の仮住居に持っていく。


食べる分以外を穴に埋めたら、調理開始だ。少し離れた場所でまず落ち葉の山を用意して、オニクの実をその中に放り込んで火をつける。その間にツンカラ草を爪でみじん切りにする。これは山葵みたいなものだが、元家族はこれをただの辛い草であまり美味しくないといって敬遠していた。

醤油があれば尚良かった。肉の焼けたような香ばしい匂いがただよう。オニクの実が焼けた。オニクの実を半分に切り、ツンカラ草のみじん切りを乗せて食べる。

香ばしく焼けたオニクの実は以前よりも固かった。やはりサラママダーの焼き加減が絶妙だったからこそ、旨かったのだ。

何だかパサついているが、ツンカラ草のお陰で味や香りがついてそこそこ美味い。味付けって大事だ。

もう一つのオニクの実にかぶりつこうとしたら、周囲からガサゴソと音が聞こえた。待っていたぜ。


やって来たのはコッコラプトルが三体。二足歩行の小型恐竜に羽毛を生やしたような……ぶっちゃけニワトリモドキだ。翼は前足のようについており、後ろ足は太く逞しい。尻尾はオナガドリのような感じ。

オニクの実を焼いていれば、匂いに寄せられて他のモンスターがやってくる。以前ビッグモスの幼虫を焼いてモンスターに襲われて命からがら逃げたこともあった。オニクの実はモンスターをおびき寄せる為のエサ。わざわざ探し回るよりも効率がいい。

サラマンダーは弱い。特に俺は弱い。だからこそ、無防備にオニクの実を頬張る俺は格好の獲物だ。

「コケコッコォー!!」

けたたましい雄叫びを上げ、赤いトサカを光らせて走ってきた。逞しい足が地を蹴り、空を切り猛スピードでこちらに向かう。

こちらに向かってきたコッコラプトルが目の前から消える。否、落ちたのだ。俺の落とし穴によって。

「コケ、ココココケコッコォー!!!」

一片にコッコラプトルが落ちた。その上からは、大量の石の飛礫が雪崩れ込む。

「ギェーアアア!!!!!」

コッコラプトルは先程よりも甲高く、耳をつんざくような大きな悲鳴を上げていた。


「コケコッコォー!」

「コケコッコー!!」

「コケッコー!!!」

「「「「「コケコッコォー!!!!!」」」」」

森林全体に響き渡る鳴き声が四方八方から聞こえる。

ドスドスドスドスドスドスドスドスドス

コッコラプトルの群れが辺りを囲んだ。全方向を一気に囲まれてしまった。

俺は、"死"の一文字が脳裏に浮かんだ。


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サラマンダー・サバイブ 海宙麺 @rijiri894

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