第5話 空
俺は今日も空を飛ぶ練習。走り高跳びの要領で走力をつけて勢いで飛ぶが、すぐに地面とディープキス。
「ぶげっ!?」
すぐに起き上がりまた助走をつける。大地を蹴って跳躍する速さも高さもかなり上がった。もはや足腰が強くなってしまった。このまま陸上選手を目指せそうな気がしたが、あくまでも飛行練習だ。
いつの間にかこちらの元にやってきた、アカマンダが空中から見下ろしながら嘲笑っていた。
「これはこれは一番弱い兄貴じゃん。まだ飛べないの?まだ火力も低いままなの?」
「……」
「無視するとはいい度胸じゃん」
アカマンダの爪が俺の腹部を切り裂いた。激痛が走り、傷口が熱い。ぬるぬるしたものが傷口から滴っている。
「はぁ……おもんな。とりあえず食糧だけ盗ってくか」
アカマンダが俺から離れ、のっしのっしと地響きを伴う足音を響かせて食糧を探し出した。
薄れゆく意識の中で、アカマンダを目で追うことしかできなかった。
目が覚めたころには辺りは薄暗くなっていた。紫がかった雲が浮かんでいる空に少し冷たい風が吹いている。もう夕暮れ時だ。急いで食糧を集めなければ。俺はボロ雑巾の体を起こして、弟妹の食糧を集め出した。
重い体を引摺りながら
サラママダーは俺を見るなり、火竜なのに冷たい視線を向けては素知らぬ顔。
俺の居場所は、もうここには無いのだと悟った。弱肉強食たるこの世界では、弱い者の立場は無いに等しい。その上サラマンダーという種族はモンスターの中で最弱の種族。「サバイバルクエスト」に登場するモンスターの中でも戦闘能力が低く、経験値が多いため経験値狩りによく倒されていたし、レベリングで倒した。
まさか火事で死んだ転生先がサラマンダーで、その中でも弱くて
俺は、気配を悟られないうちに住み処を出ていった。今日からホームレスだ。夜空には満月が浮かんでいる。月明かりを元に住み処から離れていった。
しかし、飛べない上に火力も低いサラマンダーが外に出て野良一匹とは随分な無茶をしたものだ。勢い任せに出ていったものの、これからどうしようか。まだ進化していないこの小さな体のお陰で、体を隠して眠れそうな場所を探すのにはそう時間はかからなかった。大樹の根本の窪みがいい感じに収まる。
これからのことは明日から考えよう。今はただ眠い。
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