第11話 再開

 列車はゴトゴトと線路を進む。

 列車は二日で次の街へと近付いた。

 誰もが襲撃を意識する。

 荒野の真ん中を突っ切るとは言え、いつでも襲撃が可能なわけじゃない。列車の移動に合わせて襲撃するとなれば、奴らだって、街の近くの方が何かと便利が良い。

 だから、今が一番危険であった。

 警戒の人員が増やされる。

 先行する警戒の者からの知らせは無い。

 

 イブキはいつも通り、珈琲を淹れて、レイに渡す。

 「あと少しで街か・・・これを後13回、繰り返さないといけない」

 「そうですね。あと5日間は列車の旅ですから」

 イブキは主に不安な顔は見せない。無表情に見えて、微かに笑みを浮かべた顔。

 レイが見る彼女の表情はいつもそうだった。

 何を考えているのかまったく解らない。

 不愛想とも違う。敢えて相手に表情を読ませない。そんな感じだった。

 常に一歩、控える感じで居て、父に聞けば、日本女性とはそんな奥深しさがあるんだと言われた。

 

 列車が向かう先にある町の酒場。

 小さな町の酒場には珍しく大勢の輩が騒いでいた。

 その中心にはマリアが居た。

 「くそっ、折角、列車の足止めのためにキャノン砲まで用意したっていうのにさ」

 彼女はテキーラを煽りながら、毒づく。

 用意周到に準備した計画が水の泡となった。

 仲間も何人か失い、金も入らないでは損失が大き過ぎる。

 「くそったれ・・・もう一度。列車を襲う。ありったけの弾と火薬を用意しろ」

 マリアの怒声に部下達が気勢を上げる。

 すでに計画などどうでも良かった。この町に入る前に列車を襲うつもりだった。

 町で集めたゴロツキも混ぜて、56人の強盗団が再び、襲撃の為に町を立った。

 

 カールは苛ついていた。

 一度目の襲撃で受けた損害は決して少なくない。

 はっきり言えば、警備担当としてはヘマをしたレベルだ。

 だから二度目はあってはならない。

 襲撃されたとしても無傷で通り抜けねばならない。

 今回は保管の問題で危険だと判断して、載せなかったダイナマイトを用意した。

 相手がキャノン砲まで用意するなら、これぐらいを用意しないといけないと思ったからだ。さすがに列車に大砲を載せる事は出来ないからだ。

 次にあんな襲撃を受けたら、今度こそ、危険だった。

 警備は万全と言ったところで、数で攻めて来られたら、不利に決まっている。

 紙タバコを取り出し、オイルライターで火を点ける。

 紫煙が窓から外へと抜ける。

 「だが、待ち伏せするにも奴らだって移動の時間は無いだろう。あいつらがそう何度も仕掛けて来れるわけが無いか」

 この先を抜ければ、金塊輸送計画を知っているヤツだって殆ど居なくなる。この列車を狙うヤツは居なくなるだろうし、居たとしても普通の列車強盗を働く程度の規模なら撃退は簡単。

 だから、カールは先程の奴らがしぶとく襲撃を繰り返すのを心底、警戒していた。

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