ミッドウェイ
白瀬直
第1話
艦載機の尾が引いた白い線が青い空にいくつも描かれる。その一つ一つがその先で赤く散り、黒い煙を吐きながら地に落ちる。
足元の床は響きを伴いながら揺れる。まだ生存している気銃が火を噴き、積載された艦砲射撃が空を裂く。
艦載機の転換中を狙われた直撃だ。甲板の上は炎に包まれ、人の影は蠢く程度にしか見えない。爆撃の直撃も少なからず。艦の命運は、この船の上で半生を生きた身だからこそ手に取るように判る。
長くは保つまい。
それは、この船だけの話ではなかった。この艦隊は国家艦隊の虎の子。失った時点でその先が潰えることは明白だった。
極東、黄金の国と呼ばれた我が国の艦隊。その行方はまだこの視線の先に合った。
差し込んだ日の光。
奇跡か、その艦爆は滑走路の隅で無傷のまま佇んでいた。
沈まぬ。
そのためにできることは、何か。
なければ、やるしかないのだ。
踏み出した足が、その熱に動かされる。
灼熱の地獄の中で、艦の命運と国家を背負った制帽はその身を焦がしていた。
ミッドウェイ 白瀬直 @etna0624
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます